2024年01月28日

ジャンプ、ダーリン

 ドラァグクイーンの青年と介護という珍しい組み合わせの映画。脚本がもう少し巧みなら大傑作になったのにちょっと惜しい作品でしたけど、狙ってないのだろうな。


作品情報 2020年カナダ映画 監督:フィル・コンネル 出演:トーマス・デュプレシ  クロリス・リーチマン リンダ・カッシュ 上映時間90分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマート新宿  2024年劇場鑑賞27本



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 【ストーリー】
 俳優志望の青年ラッシュ(トーマス・デュプレシ)は30歳過ぎても芽が出ず、ドラァグクイーンに転身しようとしたが、初舞台で逃げ出してしまう。行き場を失った彼は誕生祝に車をプレゼントしてくれるという祖母マーガレット(クロリス・リーチマン)の自宅に向かった。


 久々に会うマーガレットの認知症が進んでいてラッシュはショックを受ける。このまま一人暮らしをさせるわけにいかず、施設にいくのは絶対に嫌だと拒む彼女を介護して、一緒に暮すことにする。夜は田舎のバーでドラァグクイーンのバイトをしようとするラッシュだったが…


 【感想】
 30歳過ぎて何物にもなれずあせるラッシュと、自分が認知症にかかっていることを知り死を待つしかないマーガレット。人生がけっぷちの2人が支え合う様子は、介護体験がある僕にとって心が痛くなりました。久々に会い、それほど仲の良くなかった祖母の家から最初はカネをくすねようとしたラッシュが、祖母の若いころの話や写真をみて、次第に気持ちが彼女に寄り添っていく様子は心地よい。


 一方で、ドラァグクイーンのシーンは歌も踊りもたっぷり長し、都会では怖くて逃げても田舎で通用したことから、徐々に心の痛みが消えて前向きになっていく様子が伺えます。また、ゲイバーのバーテン、ジャスティン(アンドリュー・ブシェル)との新たな恋も生まれます。マーガレットの認知症も改善していきました。


 しかし、世の中良いことばかりではありません。ラッシュの母エネ(リンダ・カッシュ)は2人の生活がうまくいくわけないとマーガレットを施設に入れようとします。それは常識的な判断でもあるのですけど、老人にとっての幸せは何なのか。長年の思い出のしみついた家を離れて、安全な新しいホームで暮すのとどちらがいいのか、考えさせられます。ラストは僕にとっては非常にショッキングで、本当にいろいろ考えさせられました。


 一方、ラッシュの心の動きがふらふら。恋愛やドラァグクイーンとしての決意が介護の話と巧くかみ合っていないようにみえます。大人の恋愛というのが描き方が大変なのかもしれませんけど、このへんの恋愛、ドラァグクイーンシーンにマーガレットを巻き込めばもっと面白かったのにと残念。


 リーチマンは1971年に「ラスト・ショー」アカデミー助演女優賞を受賞した大ベテラン。撮影時は90歳で、本当に認知症としか思えない動き、仕草には驚かされました。これが遺作となり、本作でロサンゼルス・ゲイ・レズビアン映画祭の審査員大賞など、LGBTQの傑作として評価されました。映画人生をまっとうしたといえましょう。
posted by 映画好きパパ at 06:59 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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