2024年02月04日

哀れなるものたち

 ヨルゴス・ランティモス監督作品らしい独自の幻想的な美意識とストーリーに彩られた寓話。エマ・ストーンがとにかく見事な脱ぎっぷりでひたすらHします。賛否両論ですが、僕は1月のベスト。


作品情報 2023年アメリカ映画 監督:ヨルゴス・ランティモス 出演:エマ・ストーン、マーク・ラファロ、ウィレム・デフォー 上映時間141分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ港北  2024年劇場鑑賞37本




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 【ストーリー】
 19世紀末のイギリス。天才外科医のゴドウィン(ウィレム・デフォー)は妊娠中に橋から投身自殺をした若い女性(エマ・ストーン)の脳みそと胎児の脳みそを交換する実験を行った。ベラと名づけられた女性は、急速に成長していった。


 助手のマックス(ラミー・ユセフ)との婚約が決まったベラだが、プレイボーイの弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)に誘惑され、駆け落ち。壮大な冒険の旅をはじめ、各地で驚くべき出来事に遭遇していく。


 【感想】
 冒頭、真っ青な服のエマ・ストーンが身投げするところからスタート。すぐに画面はモノクロになります。赤ん坊の脳で大人になっていないということなんでしょうか。エマ・ストーンの動きも幼児らしく大げさで、奇妙な動き。赤ちゃんが泣いていると「殺してしまえ」なんてとんでもない発言を繰り返します。


 ゴドウィンは、自分自身がフランケンシュタインの怪物のように顔中傷だらけ。そんな彼が、元ネタとなった「フランケンシュタイン」のような怪しい実験装置で女性を蘇らせるというのだから人を食っています。しかし、フランケンシュタインの小説とちがい、ゴドウィンはベラを溺愛。危険だからといって屋敷の外には出しません。さらに、信頼している弟子のマックスと婚約させます。このあたりは家父長制のパロディといえるでしょう。一見、愛しているようでも過保護で束縛する父親に、将来を勝手に決められるベラ。


 それが、ダンカンに連れ出されることで世界が広がります。ダンカンは自分で世界一Hがうまいというだけあって、ひたすらやりまくります。ベラもHが楽しくてなりません。ただ、大人の倫理観を持たない彼女は、他の人とも気持ちいいか試してしまい、ダンカンを困惑させます。マッチョで女をリードするという一昔前の主役タイプのダンカンが、ベラの自由な行動に翻弄され、次第に彼女の虜になってぼろぼろになっていく姿も、フェミニズム的な現代映画界の潮流にそっています。


 さらに、ある事情でベラはパリの娼館で働くことになります。そこで、さまざまな男たちとHするのですが、まあ、男たちの情けないこと。普段は威張り散らしている男たちが手玉にとられる様子をたっぷりとみせられるのは、まさに「哀れなるものたち」というタイトル通りです。それにしても、今や大女優のエマ・ストーンがここまですっぽんぽんになって、いろんな姿勢のHをみせるというのはすさまじい女優魂。アカデミー主演女優賞の最有力といわれるのもむべなるかな。


 一方、バービーと同様、当初はフェミニズム映画のようにみせますが、後半はそれって男が悪いのではなくて哀れなのは人間の本性ではないのか、という形で進んでいきます。例えば、飢えに苦しむ貧民をみて、ベラは何とかしようとするのですけど、これって口だけで実際にはむしろ事態を悪化させるリベラルへの皮肉。ラストも原作小説と違ったランティモス監督のオリジナル。過去の彼の作品のように、人間に対する皮肉な見方は顕在でした。


 ストーリーとは別に、美術、衣装も目を見張るものがあります。モノクロのゴシックホラー風の撮影は「フランケンシュタイン」「ドラキュラ」などを意識しています。カラーになったあとの原色に近いドレスを次々ときこなすベラのファッション。スタジオ撮影ながら世界各地の独特な世界を作り上げていく美術。そして、ベラの自由すぎるダンスに代表される音楽のつけかた。どのパートも非常にとんがっていて映画は総合芸術だと思い出させてくれます。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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