作品情報 2023年香港映画 監督:ハン・シュアイ 出演:ファン・ビンビン、イ・ジュヨン、キム・ヨンホ 上映時間92分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館 2024年劇場鑑賞41本
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【ストーリー】
中国で辛い育ちをして、行方不明の母を探しに韓国へ移住したジン・シャ(ファン・ビンビン)。韓国で空港の保安要員として働くが、配偶者ビザを得るために好きでもないのに結婚した夫イ・スンフン(キム・ヨンホ)にDVを受けており、抑圧された毎日に心は死んでいた。
ある日、出国審査で不審な動きをする緑の髪の女(イ・ジョヨン)を発見。押し問答しているうちに、彼女は出国をあきらめてどっかに消えてしまう。ところが、空港から帰宅しようとするジンの前に彼女は現れて、強引に部屋に上がりこむ。さらに彼女は麻薬を持っており、一緒に売りさばこうと提案。3500万ウォンあれば離婚できるため、金が必要なジンはその話に乗ることにしたが…
【感想】
香港のノワール映画で、中国本土の映画なら決して許されなかった女性同士の同性愛シーンや犯罪の成功シーンがあります。ファン・ビンビンはヌードにはなっていないものの、DVで無理やりスンフンに乱暴されるシーンも含めて、まさに体当たりの演技。やつれた表情は実際に彼女が中国政府や官民からバッシングされたことを思い出させます。
一方、緑の髪の女も彼氏のドン(キム・ミングィ)に支配され、麻薬の密輸をやらされており、行き場も夢もない女たちが、犯罪に手を出すしかないという切なさがたまりません。また、スンフンもドンも女を無理やり支配しようという傲慢な男。ジンたちの必死の抵抗、そして彼女たちを怒らせる共通のワードが、これまた切なく、哀れに感じてしまいます。抑圧された生活を捨てて、自由を求めるにはお金が必要だし、でも犯罪しかすぐにお金になる手段はなかったのか、考えさせられます。
おかしかったのが、黙っている緑の女にボウリング場の職員が「韓国人?中国人?日本人?」と聞いて回るところ。一方で、劇中の登場人物はジンが中国人だということを初対面でもわかっています。このへんの東洋系の顔立ちの見分け方って、同じ東洋人の僕がみても奥が深い。でも共通しているのは家父長制、女性蔑視が西洋よりは根付いていることで、日本はここまでひどくなくても、彼女たちのようにつらい生き方を余儀なくされている人たちはいるのだろうなとみていました。そういえば、男はエキストラを除けばクズしかでてこなかったw
ハン・シュアイは中国の女性監督で、中国ノワールの第一人者といっていいロウ・イエの研究本を出しているだけあって、やるせない女の気持ちをうまくスクリーンに出しています。また、撮影監督は中国映画の経験もあるベルギー人のマティアス・デルヴォーで、ソウルの夜景が昔の香港の切ない夜景のように、美しくもはかなく見えました。
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