作品情報 2023年日本映画 監督:石橋夕帆 出演:唐田えりか、芋生悠、石橋和磨 上映時間76分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2024年劇場鑑賞46本
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【ストーリー】
新卒で勤めた会社をつらくて辞め、今はコンビニバイトで暮す飯塚希(唐田えりか)。時折クレーマーの客にぶつかるものの、店長(矢柴俊博)やバイト仲間(石橋和磨、安倍乙)ともある程度の距離を保ち、平穏だが代り映えのない日を送っている。
ある日、コンビニにやってきた客が中学校の同級生で、転校してそれっきりになっていた大友加奈子(芋生悠)だったことに驚く。最初はぎこちなかったが、何度か会ううちに友情がよみがえり…
【感想】
激務の日々を送ってると穏やかな日常にあこがれるけれど、いざそうなると自分の生きていることの意味や将来になんとなく不安になっていく。まして、コンビニバイトなんて一生食っていける仕事でもありません。そんな人生のエアポケットに落ちたヒロインが、古い友人との偶然の再会でちょっとずつ前へ歩き出します。
インディーズ映画ではこうした身の回りの大して大きな出来事がない作品が多く、制作費もかからないことも理由なんでしょうが、本作は脚本も手掛けた石橋による唐田への当て書き。さらに初共演の芋生とはプライベートでは友人だそうで、等身大の出来事を無理に気負って演技する必要がないという環境が奏功しています。76分という短めの時間も、観客が飽きる前でいい。
石橋はデビュー作の「左様なら」同様、若い女性の心理のひだを丁寧にあらわしていくのが本当にうまい。ずっと平凡な毎日が続くようでも、おでんや枝豆が飛んだりと、傍から見てはささいだけど本人にとっては印象的なエピソードを盛り込むのがうまい。2人の友情に焦点をあてて、恋愛関係にたいして踏み込まなかったのも上質さを感じました。おっさんの僕が見ても女性の友情は尊い。また、店長やバイト仲間が距離をおいているようで、ちゃんと手をさしのべているという人間関係も世知辛い世の中ではほっとします。
映画館では唐田が他の映画の舞台挨拶にゲストできていて、金髪でした。撮影の関係かもしれませんが、彼女は本作のような役柄にまたでてほしい。芋生の受けの演技との組み合わせもばっちり。脇役では安倍のギャルだけど意外と本質を見抜く役と、いい人だけどちょっと空回りする矢柴の役が気に入りました。クレイマー客のような嫌な登場人物も出てきますが、主だった登場人物が等身大で心優しい人だったというはなんとも愛おしいです。
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