2024年02月17日

レオノールの脳内ヒブナゴジア

 メタ構造でB級映画愛にあふれるフィリピン映画。つくりはうまくないけれど、情熱で押し切った感じでしょうか。


 作品情報 2022年フィリピン映画 監督:マルティカ・ラミレス・エスコバル 出演:シェイラ・フランシスコ、ボン・カブレラ、ロッキー・サルンビデス 上映時間99分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2024年劇場鑑賞53本



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 【ストーリー】
 72歳のレオノール(シェイラ・フランシスコ)は若いころはアクション映画の女性監督、脚本家だったが、ある事情で映画界を引退。今は息子のルディ(ボン・カブレラ)とひっそりと暮しながら、発表するあてのないアクション映画のシナリオを書いていた。だが、生活が苦しいのにアクション映画のビデオを買って、ルディから怒られていた。


 ある日、レオノールは事故で頭を打って意識不明となってしまう。しかし、彼女の意識はなんと、自分が執筆中のアクション映画の中に入り込んでしまい、貧しいながら悪徳市長と戦うヒーロー、ロンワルド(ロッキー・サルンビデス)に協力することになる。一方、現実世界でルディは、病院で必死に看護するのだが、おかしなできごとができてしまい…


 【感想】
 レオノールのいる世界、レオノールが執筆している脚本の世界、そして、この映画を撮影しているマルティカ・ラミレス・エスコバル監督の世界と3つの世界が複合的になりたち、次第に融合していきます。頭の中はこんがらがりそうですが、勢いで押し切っているのはさすが。


 脚本の世界ではレオノールは神様であり、好きなだけ登場人物を動かすことができます。脚本に沿ってこれから何が起こるかを説明して、ロンワルドらその世界の人物に驚かせることを。しかし、レオノール自体がそのことに無自覚なのか、それともとことんアクション映画が好きなのか、悪役を消し去るなんてチートはしないで、あくまでもロンワルドの戦いについていきます。72歳のおばあちゃんが、激しいアクションの世界に入り込むというのはある意味微笑ましいし、悪徳政治家が庶民を苦しめるというのはフィリピンの現状をも反映しているのでしょう。


 一方、ルディのいる世界では、レオノールに怒ってばかりだったルディが実は彼女のことを心から心配していることが明らかになっていきます。ここは昨年母親を亡くした僕の琴線に思い切り触れてしまいました。不思議な出来事がおきても、何としてもレオノールを助けようと必死になる彼の姿に心がジーンときます。そして、愛情があっても彼女と分かれざるを得なかった元夫のバレンティン(アラン・バウティスタ)によって、何で彼女が映画を引退しなければならなかったのか悲しい過去が明らかになるのもいい。


 そして、エスコバル監督の世界なんですが、そこまでメタ構造を広げると観ているこちらの頭も混乱してしまいました。しかし、彼女もアクション映画と女性の映画人への強い思い入れがあり、だからこそ、レオノールというおばあさんの元映画監督というキャラクターを

設定したことがよくわかります。 アクションはなんとも泥臭くて痛そうなうえチープなんですが、それも古き時代のアクション映画へのオマージュを感じさせられます。エスコバル監督は撮影当時はアラサーという若さなのに、こういう往年のアクション映画への愛がすごい。まあ、「ニューシネマパラダイス」も当時アラサーのジュゼッペ・トルトナーレが監督しています。最近多いベテランの映画監督による映画愛映画よりも、若い映画マニアによる映画愛映画のほうが、ある意味はまるといえそうです。
posted by 映画好きパパ at 19:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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