作品情報 2022年韓国映画 監督:アン・テジン 出演:リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン、チェ・ムソン 上映時間118分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2024年劇場鑑賞59本
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【ストーリー】
17世紀前半、盲目のギョンス(リュ・ジュンヨル)は天才的な鍼灸師。弟の治療費を稼ぐために、宮廷で働くことになる。おりから清の人質になっていた世子の昭顕(キム・ソンチョル)が8年ぶりに帰国し、父親で国王の仁祖(ユ・へジン)は大喜びだった。
しかし、昭顕が怪死してしまう。ギョンスは上役で御医のヒョンイク(チェ・ムソン)が毒をもっているところを目撃してしまった。実はギョンスは真っ暗なところでは視力がわずかながら回復するという症状があったのだ。しかし、黒幕がだれか分からなければ証言することもできない。ギョンスは命がけで真相を明らかにしようとするのだが…
【感想】
昭顕は1645年、帰国して2カ月で全身が黒ずんで血が流れるという謎の死を遂げます。当時、中国では明から清にはげんが移り、清軍は朝鮮に攻め込んで仁祖は屈辱的な敗北を遂げています。一方、昭顕のバックには清がおり、朝廷は親清派と反清派が水面下で争っていました。さらに、昭顕の生母は既に死んでおり、権勢をふるった側室の昭容(アン・ウンジン)とも昭顕は衝突していました。そのため、毒殺説は現代でもささやかれていますが、真相は不明です。その史実に盲目の目撃者を登場させることで大胆な解釈を可能としました。
この手の作品の典型ですが、序盤はユーモア交じりでまったりと進みます。盲目のため宮廷でまごまごするギョンスですが、雰囲気であいびきしている男女を見つけたり、薬の整理を命じた意地悪な先輩に完璧な仕事を見せてぎゃふんと言わせたり。また、昭顕は史実通り非常に温厚で気がつく人物で、夫人(チョ・ユン)や幼い息子の元孫(イ・ジュウォン)ともほのぼのとした家庭を気づいています。元気な元孫や昭顕は盲目のギョンスを労わり、彼が昭顕寄りになっていくことが次第に分かってきます。
しかし、暗殺が発生して一気に緊迫感が高まります。盲目の上しがない鍼灸師ですから、口封じのために消されたり、犯人にでっちあげられる危険があります。朝廷の対立状況を見極めて、だれにどのタイミングで目撃したことを伝えるのか正しく判断しなければ文字通りり命取り。誰が敵で誰が味方かわからないまま、ギョンスがどんな決断を示すのかドキドキしながらみることになります。
そして、終盤は宮廷の陰謀が一気に吹き出します。朝鮮の歴史では王様がクーデターで追放されたり殺されたりすることがあり、仁祖がどうなったのかという知識がなかったため、陰謀がどういうふうに着地するかわかりませんでした。しかし、過去の同種の作品では、架空のキャラクターである巻き込まれた庶民は本人か家族が殺されるシビアな展開が多いので、ますます緊張が高まります。エピローグのエピソードまで含めて濃厚な歴史サスペンスにしびれました。
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