作品情報 2021年エストニア、イギリス映画 監督:ペーテル・レバネ 出演:トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ディアーナ・ポジャールスカヤ 上映時間107分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2024年劇場鑑賞60本
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【ストーリー】
1970年代後半、徴兵されエストニアの空軍基地で働く二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は基地の事務を担当する女性兵士のルイーズ(ディアーナ・ポジャールスカヤ)と仲良く、周囲からは結婚するのではと思われていた。
そこへ、パイロットのロマン少尉(オレグ・ザゴロドニ)が転属されてくる。基地を案内したセルゲイは、カメラが共通の趣味だとわかり階級の差を離れて親しくなる。やがてそれは愛情へと変わっていった。しかし、ソ連では同性愛は犯罪となる。さらに、セルゲイは除隊の日が近づき…
【感想】
セルゲイ、ロマン、ルイーズがとびっきりの美男美女。レバネ監督の撮る美しいラブシーンだけでなく、リトアニアの風景や歴史のある建物といったロケ地の良さもあいまって、陶然としそうになります。また、予算の関係からSFXはたいしたことがありませんが、パイロットという設定上、ミグ戦闘機を始めとする武器や「フルメタル・ジャケット」ばりの訓練風景なども堪能できます。映像もわざと古めかした感じにしているのが、時代によくあっています。
でもストーリーに入り込むと、2人のゲイカップルがはたの迷惑を考えずにイチャイチャしまくるのは、ちょっとわがままにすぎないかと思ってしまいました。さらに、トラブルになるのも本人たちの不注意だし。まあ、純愛至上主義の人から見れば、それでも愛を貫き通すのもありなんでしょうけど、個人的にはちょっとね。
基地司令のクズネツォフ大佐(ニコラス・ウッドソン)は温厚ですが、KGBへの報告をする恐らくは政治将校のズべレフ少佐(マルグス・プランゲル)の陰湿さなどは時代を感じさせます。またNATO軍の戦闘機が近づいてスクランブルをかけるなど東西冷戦を感じさせる描写もうまい。
原作はロシアの俳優、セルゲイ・フェティソフの回想録「ロマンについての物語」。レバネ監督とトム・プライヤーは実際にモスクワまでセルゲイに会いに行って取材をしたそうですが、彼は2017年に病死。映画の完成に間に合いませんでした。しかし、この映画が大ヒットしたことが後押しとなり、エストニアでは同性婚が認められたそうです。一方でロシアではプーチン政権が同性愛者を弾圧。また、オレグ・ザゴロドニはウクライナ人、ディアーナ・ポジャールスカヤはロシア人と完全に敵国人同士になってしまいました。40年以上前同様、国際情勢に庶民が振り回されているのはなんとも重い気持ちになってしまいます。
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