作品情報 2023年アメリカ映画 監督:アリ・アスター 出演:ホアキン・フェニックス、エイミー・ライアン、パーカー・ポージー 上映時間179分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2024年劇場鑑賞67本
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【ストーリー】
常に不安を抱えているボー(ホアキン・フェニックス)は母親のモナ(パティ・ルポーン)の誕生日に帰郷するはずが、数々のアクシデントに巻き込まれて欠席するはめに。ところが、モナが天井から落ちてきたシャンデリアで死亡したと連絡が入る。
葬儀のために帰郷しようとするボーだが、またもやアクシデントに巻き込まれ、医師のロジャー(ネイサン・レイン)、グレース(エイミー・ライアン)夫妻が運転する車にはねられる。ロジャーの家で治療を受けるボーだが、早く葬儀に行きたくても、なぜかトラブルが起きてなかなか行けずに…
【感想】
アスター監督が自分の観た悪夢をそのまま映像とストーリーを並べていくような感じ。まったく論理的でないので、観客がそれぞれ、自分が正解と思う解釈を選ぶという感じでしょう。自分の解釈が正解かまったく的外れなのかわからないので、このタイプの作品はむずがゆくて苦手なんですよね。実際にネットで専門家も含めて、感想、解説をいくつも読むけど、どれ一つあってるとは思えない。
冒頭からアスター監督らしい、ちょっとグロくキモい情景が繰り広げられます。ボーは汚く古い団地の一室に住んでいるのですが、目の前の道路では素っ裸の通り魔が通行人を襲ったり、顔も含めて全身入れ墨だらけの男が威嚇したりと、こりゃボーじゃなくても不安になってしまいます。ボーが静かに寝ていても、近所の住民から鳴らしてもいない音楽を止めろという苦情で、叩き起こされます。こんなふうに悪夢のような不条理な条件が延々と続きます。
さらに、非常にネガティブなゆえにどんどん事態が悪化していくボーは精神も病んでいき、どんどん現実と妄想、過去と現在の区別が観客にもつかなくなります。モナがボーに幼いころから異常に歪んだ愛情をそそぎすぎていることも、事態の混乱に拍車をかけます。何しろオープニングはボーの出産のときに、モナが医師にいちゃもんをつけているところらしきシーンから始まるのですから。
悪夢のせいか、次々と突拍子もない出来事が起き、キャラクターも皆狂っています。この展開を思いつくなんてアスター監督の頭の中はどうなっているのかと本気で疑うほど。アスター監督作品では珍しく、性行為の描写もねっとり描いていて、それも含めたボリューム感はすごい。さらに、名優ホアキン・フェニックスの、ボーになり切ったような狂った演技が余計にこちらを混乱させていきます。この狂った世界に浸るしか、観客の僕にはできない。そんな圧倒的敗北感にただただ圧倒されます。
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