2024年03月07日

白日青春−生きてこそ

 難民との軋轢を描き、世界全体に通じる内容となっていますが、今の香港映画でこうした社会批判映画が良く撮れたと感心しました。ただ、ストーリーはちょっと盛りすぎなところも。


  作品情報 2022年香港、シンガポール映画 監督:ラウ・コックルイ 出演:アンソニー・ウォン、サハル・ザマン、インダージート・シン 上映時間111分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネマジャック&ベティ  2024年劇場鑑賞79本 



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 【ストーリー】
 南アジア系の難民と地元住民の軋轢が問題となっている香港。老いたタクシー運転手のチャン・バクヤッ(アンソニー・ウォン)は息子のホン(エンディ・チョウ)の結婚式に急ぐ途中、パキスタンからの難民でカナダへの移住申請中のアフメド(インダージート・シン)の衝突事故を起こしてしまう。難民相手ということで傲慢になったチャンは、後日、偶然出会ったアフメドと喧嘩になり、ケガを負わせてしまう。だが、ホンが警官ということもあり、事件をもみけそうとするうちに逃げるアフメドの車と衝突。彼を死なせてしまう。


 アフメドには幼いハッサン(サハル・ザマン)という息子がいた。彼は生きるために小学校にも通わず、大人たちの窃盗団を手助けはじめた。一方、良心がとがめたチャンは、自分が事故相手だということを隠してハッサンを窃盗団から抜け出させ、何とか援助しようとするのだが…。


 【感想】
 日本でもクルド難民との軋轢が問題となっているように、世界中で似たような問題は起きています。じつはチャンも若いころ中国本土から当時英国領だった香港に密入国した過去があります。その際、ホンを本土においてきたことで、親子の間には非常に微妙な関係が生まれてきます。アフメドを死なせただけでなく、かつて幼い子供を置き去りにした後悔からチャンはハッサンを助けようと必死になります。また、自分も密入国者だったくせに、既得権益ができた今では新規の密入国者を嫌うというのも人間あるあるという感情。


 一方、難民と縁のない生活をしていたころは、難民をバカにして排斥に賛成していたチャンですが、ハッサンや未亡人となったハッサンの母のファティマ(キランジート・ギル)と知り合ううちに、彼らも幸せを願う自分たちと何ら変わらないことに気づいていきます。そこがまた、ホンからすれば実の息子の面倒は見なかった癖に難民の子供をかわいがることに余計反発してしまいます。この親子のすれ違いの感情もなんとも切ない。


 さて、中国映画では犯罪者は悪で罰せられるものというふうに決まっています。本作でもハッサンは子供とはいえ不法滞在者であり、窃盗もしている悪者です。しかし、彼に寄り添うような作品になっているとともに、事故の際に警察がチャンに肩入れして難民を不当に扱う描写もあり、ちょっと意外に思いました。


 名優アンソニー・ウォンは、人生に後悔する老人という役柄は本当に似合いますね。それに演技は初めてという子役のサハル・ザマンとの組み合わせは最高です。ストーリーはごつごつして説明不足やご都合主義の部分もあるのですけれど、2人の名演技と香港の陰の部分をみられるだけで満足できる作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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