作品情報 2023年イギリス、日本映画 監督:パトリック・ディキンソン 出演:リリー・フランキー、木村多江、錦戸亮 上映時間94分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:Tジョイ横浜 2024年劇場鑑賞81本
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【ストーリー】
60代の売れない作家、兼三郎(リリー・フランキー)は長い闘病生活のすえに最愛の妻、明子(木村多江)を失い、喪失感で何もする気がなかった。明子は、彼女が子供のころに過ごしたイギリスのウィンダミア湖に遺灰を撒いてほしいとの遺言を残していた。
疎遠だった息子の慧(錦戸亮)一家とともにイギリスにわたるが、二人の心と行動はすれ違ってばかり。喧嘩した兼三郎は一人、電車でウィンダミア湖を目指すが、道がわからずに…
【感想】
妻を失った老人ということでやむを得ないのかもしれませんが、兼三郎のマイペース、わがままぶりは見ていて次第にイライラしてきました。この気質が慧にも遺伝していて、親子二人がしょっちゅう口論していてこれまたイライラ。慧の妻さつき(高梨臨)や幼い娘がかわいそう。
メインプロットは高齢化の日本にふさわしく、残酷で切ない。明子は認知症をわずらい、兼三郎がシモの世話までしないといけません。ヘルパーとも折り合いが悪かったとのセリフがありましたが、老人になって頑固で周囲に嫌われると負担が全部自分にきてしまう。最後まで看取ったといえば美談にきこえますが、介護の現実はシビアであり、だれかに助けを求めなければならないと実感しました。時折、青春時代の兼三郎(工藤孝生)と明子(恒松祐里)のシーンが流れますが、あれほど若くて未来に希望ばかりの2人が、売れなくて団地住まいの小説家と認知症の重病人になってしまうとは、時の流れの残酷さをみせつけられます。
イギリスにわたってからは迷い込んだ農園で老農夫のジョン(キアラン・ハインズ)と若い娘のメアリー(イーファ・ハインズ)に助けられます。この2人は外見からは全然気づかなかったのですが演じる2人も実の親子。ジョンも妻を失っており、片言の英語の兼三郎としんみり話し合うシーンはなんともいえない味がありました。
劇中でも触れられるピーター・ラビットの舞台でもあるイギリスの湖水地方は本当に美しい。そのなかでの不仲な家族の喧嘩と和解、喪失した魂の徐々にであるけれども再生していく様子、旅先での人情にふれられたときの喜びなど丁寧に描かれています。シンプルだけど丁寧な作品でした。
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