作品情報 2024年日本映画アニメ アニメーションディレクター:黒川智之 声の出演:幾田りら、あの、種崎敦美 上映時間120分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズグランベリーパーク 2024年劇場鑑賞110本
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【ストーリー】
3年前の8月31日、突然、全長5000メートルの巨大宇宙船が東京湾上に出現。混乱で多数の犠牲者をだしたうえ米軍の攻撃にもびくともせず、人類は滅ぶかに思えた。だが、宇宙船は浮かぶだけでなにもしなかった。
それから3年後、女子高生の小山門出(幾田りら)は担任の渡良瀬(坂泰斗)に片思い中。小学校の時からの親友でゲームオタクの厨二病患者、中川凰蘭(あの)、初めての彼氏ができて舞い上がっている栗原キホ(種崎敦美)ら仲良し5人組で、青春を謳歌していた。しかし、その非日常的な日常が少しずつ浸食されていく。
【感想】
亡くなった僕の両親の話を聞くと、戦争で空襲中でもそれが日常になる感覚となり友人たちとは普通の関係を続けていたそうです。本作も巨大宇宙船が東京上空に浮かんでいるという非日常のなかでも、日常が淡々と続くというのはある意味リアル。不穏さはところどころあるけれど、それも平穏に呑み込まれていくまさに正常性デバイスといったところでしょうか。
社会に対する大言壮語する凰蘭と、小学生の時にいじめられていた彼女から救われた門出のちょっとイケてない青春はいかにもあるあるといった感じ。それでも、門出の父・ノブオ(津田健次郎)が8・31災害で行方不明になるなど、大災害の陰はでています。8・31という呼び方は3.11の大震災のメタファーでしょう。また、見せかけの平和の裏側で政府の謀略や、異星人との戦闘があるというのも、今の社会情勢への批判なのかもしれません。
こうしたなか、予告編にもある仲間の死も乗り越えて日常が進んでいきます。ところが、後半に入ると思いもしなかった仕掛けが現れ、文字通り度肝も抜かれました。それまでも十分面白かったのですが、ちゃぶ台返しというか、人間の嫌な面、自称正義の恐ろしい面を嫌というほど見せつけられるのです。浅野いにおの原作マンガは未読で、それだけに驚き、かつ心を動かされました。
この急展開したシーンは後章でどうつながるのか。さらにそれまでとはまったく違う人物や、前章でちょっとだけ登場したけどその後でなくなった人物がこの後どうなるのか。前章でのハードルはいやでもたかまり、早く後章を観たい気持ちで一杯になりました。
キャラクターデザインがまるっきり垢抜けないというのもすばらしい。基本的に美男美女はでてきません。少女たちだけでありません。防衛大臣なんかしりあがり寿のギャグ漫画の登場人物化のようなデザイン。むしろ、モブのほうがしっかりと書かれています。これもどんな意図があるのでしょうか。また、渋谷、秋葉原、吉祥寺など東京の風景も非常にリアル。看板は実際とは違う名称になっているけれど、自分の知っている実在の場所が次々と舞台になるというのもたまりません。
YOASOBIで世界的スターになった幾田りらと、ネットを中心に大人気のミュージシャン、あのというキャスティングもこの世界観にうまくはまっています。単に客寄せでなく、門出も 凰蘭も彼女たちしかもはや考えられません。2人の手掛ける主題歌もすごーくエモい。そして、脇には現在一線級の人気声優をずらりと揃えました。このキャスティングもうまくはまっています。また、劇中アニメのいそべやんの声優はTARAKO。エンドロール後、彼女への追悼のテロップが出ましたが、彼女の演技もまた素晴らしかったです。
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