作品情報 2024年日本、フィリピン、シンガポール映画 監督:松林麗 出演:山口まゆ、川床明日香、北村優衣 上映時間93分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:新宿K’Sシネマ 2024年劇場鑑賞111本
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【ストーリー】
売れない女優の卵、斉藤乃愛(山口まゆ)は、友人の東佳代(川床明日香)から、もう一人の友人の西友梨奈(北村優衣)がパパ活相手から脅されているという相談を受ける。ネットで性暴力被害に苦しむ人を助ける団体「ブルーイマジン」のことを知った3人は、主宰する巣鴨三千代(松林うらら)のアドバイスで、梨奈を救うことができた。
「ブルーイマジン」は性暴力被害者へのシェアハウスを提供していた。実は乃愛も人気映画監督の田川(品田誠)から事務所に脚本を読むように言われ、ついていったところを襲われた。だが、弁護士の兄、俊太(細田善彦)から証拠がなければ勝訴するのは難しいといわれ、田川を訴えるのを断念し、トラウマになった過去があったのだ。シェアハウスに引っ越し、三千代のアシスタントのバイトを始めた乃愛は、ある日、真木凛(新谷ゆづみ)という若い女優が、田川からの性被害の相談に来たことで声を上げようと決意する。
【感想】
権力者である映画監督に対して、何の力もない若い女性がどうやって立ち向かえばよいのか。現実でも大きな問題となっています。ただ、ネット世論などは男性側に同情的なものを見受け、「でっち上げ」「作品には罪がない」といった声が強いように見受けられます。もちろん、冤罪はあってはならないのですけれど、それでも日本の芸能界が本当に改善されているのか、あれだけ大騒ぎになったジャニーズの問題をだれも言わなくなったのをみると薄ら寒い気がします。
クライマックスはドラマ的なスカッとする勧善懲悪とほろ苦い現実のちょうど中間のうまい着地をしました。現実でももっと酷いケース、もっとましなケースそれぞれですから、こういうことがあってもおかしくないでしょう。自分が悪かったのではと自問自答する女性たちがなんとも悲惨。さらに、田川だけが100%悪いと断罪するのでなく、それを見逃す映画界ひいては日本の社会構造まで考えさせるのはうまい作り。僕自身も園子温作品は好きなだけに、作品に罪があるかどうか、ずばっと問われたらなんて答えればいいのか考えてしまいます。意味のないラブシーンは不要と思いますが。
松林監督、脚本の後藤美波の女性コンビで、性被害のシーンをあからさまに映すのは控えています。それでも田川のやり口は吐き気がするほどひどいことがしっかり伝わってきます。また、単に映画界の話だけでなく、パパ活をしている若い女性や、フィリピンから国際結婚で日本に来たけどDVから逃げてきた女性ジェシカ(イアナ・ベルナルデス)、喫茶店の常連がウエイトレスに冗談めかしてセクハラセリフを吐くなど、話を広げているのもいい。パパ活も悪と切り捨てているわけでないですし、考えを変える登場人物もでてきますし、できるだけフラットな見方をとろうとしているのが伝わります。エンドロールが流れるラストカットも超印象的。
山口、川床、北村、新谷とインディーズ系映画ではおなじみの気鋭の若手女優がそろっているのが見応えがあります。そして、松林監督自身も出演しました。彼女はこれまでリベンジポルノを描いた「冬のライオン」の主演、プロデューサーを務めた「蒲田前奏曲」でも女優の性被害についての話があります。舞台挨拶後のサイン会で今後も頑張ってほしいと声をかけましたけれど、こういうテーマに俳優、監督、プロデューサーとさまざまな立場でかかわっていくのは本当にすごいと思います。一方、女性陣はある意味、生真面目な演技が多かったので、ダメな中年男代表で意図せずにコメディリリーフというか失笑の対象となったカトウシンスケ、隠ぺいを図るプロデューサー役の松浦祐也の2人の存在も味わい深くしていました。また、劇中の司会者役がいとうさとりに似てるなと思ったら本人だったのも笑えました。
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