作品情報 2022年アメリカ映画 監督:フィリス・ナジー 出演:エリザベス・バンクス、シガーニー・ウィーヴァー、クリス・メッシーナ 上映時間121分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ 2024年劇場鑑賞112本
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【ストーリー】
1968年、シカゴの主婦ジョイ(エリザベス・バンクス)は裕福な弁護士の夫ウィル(クリス・メッシーナ)と15歳の娘シャーロット(グレイス・エドワース)と何不自由のない暮らしをしていた。2人目の子供を妊娠したものの、心不全が起きて、中絶しなければ母体が危険にさらされる。しかし、それでも中絶は違法のため引き受ける医者はいなかった。
困ったジョイはたまたま街角で、女性が困ったときはジェーンに電話してという張り紙を見つける。それはバージニア(シガーニー・ウィーヴァー)率いる女性たちが、中絶をサポートする秘密の組織だった。組織に紹介された男性医師のディーン(コーリー・マイケル・スミス)によりジョイの中絶は成功。しかし、バージニアによって半ば強制的に組織に参加させられる。やがて手先の器用なジョイはディーンに中絶の方法を教わり、自分でも行おうとするのだが…
【感想】
ほんの50年前なのにアメリカの男女差別はすさまじい。宗教上で中絶が禁止されているにしても、母体が危険でもそれに一切関係なく禁止するというのは信じられません。大病院の会議に呼ばれたジョイが、偉そうな理事たちからいっさい無視されて中絶を禁止されるシーンは当人たちにとっては必死でも、傍から見れば不条理コメディにすらみえました。
そして、裕福なジョイにとって違法な組織に加担するというのは当初、信じられませんでした。筋金入りのフェミニストのバージニアとは立場が全然違う。しかし、活動に加わるうちに貧しくて違法な中絶すらできなくて、自分の体を自分で痛める壮絶な事例などをみるうちに、考えが変わってきます。さらに、カネのためにあくどいことをするディーンと違って、女性のために何とかしようという彼女の思いも素直に共感できます。また、最初はジョイが違法行為をしていることに慌て、嫌悪感を示した家族との関係もうまく描いています。
それでも、ろくな設備もなく素人の主婦が膨大な数の中絶をこなしていくというのは、非常に危険なわけです。もし患者が死亡すれば殺人罪にすら問われかねません。当時だって女医はいたでしょうし、結果オーライでジョイたちをほめたたえるのはちょっと考えてしまいました。
エリザベス・バンクスは美しく、良い年の取り方をしたと思います。ウィルが口ではいろいろ言うけど現実では役に立たず、それでも夫婦が互いに相手を思いやるというのもうらやましかった。それ以上に、何といってもシガーニー・ウィーヴァーの闘士ぶりが格好良かった。フェミニズム映画としては分かりやすく、上質な社会派エンタメになっていますが、一番盛り上がりそうなところをバッサリカットするのはマイナス。
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