2024年04月10日

うさぎのおやこ

 大阪の底辺層で必死に生きる人たちを描き続け、自らも出演する上西雄大監督の新作。珍しく、上西自身のアクションシーンは封印されています。いかにもセリフを読んでいますみたいな登場人物がいる手作り感も含めて庶民っぽさは好きなんだけど、上映時間が短いのにこんなところで終わってしまうあっけなさも。


 作品情報 2023年日本映画 監督:上西雄大 出演:徳竹未夏、清水裕芽、上西雄大 上映時間87分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネ・リーブル池袋  2024年劇場鑑賞125本




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 【ストーリー】
 軽度の知的障害がある22歳の来栖玲(清水裕芽)は小柄で小学生に間違えられることもある。母の梨香(徳竹未夏)は夫を事故で亡くしたうえに、貧しい生活のなか玲を育てることに疲れ、パチンコや酒に逃げてネグレクト状態になっていた。


 区役所の障害福祉課の女性職員、北村(古川藍)は何とか玲の力になろうとするが苦戦するなか、新任の精神科医恵比寿(上西雄大)は玲とのコミュニケーションをとれるようになる。だが、家賃を迫られ梨香から働くようにいわれた玲は風俗店に応募する。風俗嬢のカナ(峯村あすか)は知的障害の玲に帰るように言うが、悪徳オーナー(萩野崇)は、文章が理解できない玲につけこみ、風俗のことを説明しないまま契約書に印鑑を押させ…


 【感想】
 恵比寿が最後大暴れして悪者を退治するのかと思ったら違って、もっと地に足の着いた話でした。発達障害の両親に育てられた恵比寿は致命的な方向音痴という欠点があるものの、患者によりそった治療を進めます。ネグレクトをうけて他人に心を閉ざしている玲が、信頼していた前任の医師(楠部知子)からもらったウサギの帽子をかぶっているのをみると、自分もカメレオンの帽子をかぶって、玲のことを馬鹿にしません。何気にシャーロックホームズバリの推理力を「精神科医だから」という理由でもっていますけど、玲との関係では役に立っていないのは笑えましたが。


 本来、精神科医と患者はあまりプライベートでの交流はいけないのですけれど、玲が風俗店に入って大慌てして、北村と一緒に何とかしようとあがくすがたは恵比寿の温かさがつたわります。さらに、どうすればいいのか分からずにおたおたするのは、よくあるスーパーヒーロー的な主人公があっさり解決するのと違って現実味があります。


 玲に同情して助けようとするカナのような善人もいれば、変態を相手にして金儲けの道具にしようという悪徳オーナーのような悪人もいます。さらにその中間として、障害のことを理解せずに馬鹿にしたり誤解して責め立てたりする人たちもいて、僕も恐らくこういう無理解者のなかに入るのだろうと反省しました。そもそも、母親の梨香ですら自分のことで精一杯で、玲に向き合おうとしていません。世の中の大半はそうだという世知辛さと、それでも恵比寿やカナのような人がいるとの心強さと両方を感じました。


 大阪が舞台なので昭和の香りのする人情の良さがしみわたります。関西弁だらけのセリフは聞き取りずらいところもありましたが。徳竹、古川ら上西作品の常連がいるなか、実年齢は26歳なのに本当に小学生にしか見えない役をこなした清水の演技はすごかった。また、東北出身の峯村がこのなかにスムーズに溶け込んでいるのもすごい。もうちょっと彼女のことを観たかったですね。
posted by 映画好きパパ at 06:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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