2024年04月20日

ノルマル17歳。 ― わたしたちはADHD

ADHDの女子高生の等身大の生活を描いた青春映画。僕の若いころはADHDなんて子渡場はなかったけど、今だったら確実に診断されたろうなと思いつつ、これからどうするのだろうかとみていました。


 作品情報 2023年日本映画 監督:北宗羽介 出演:鈴木心緒、西川茉莉、眞鍋かをり 上映時間80分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:アップリンク吉祥寺  2024年劇場鑑賞135本




 【ストーリー】
 ADHDと診断され、周囲にも公言している女子高生の朱里(鈴木心緒)は自分の関心のないことはできず、逆に興味をもったら集中しすぎてしまう。その日も朝、珍しく早起きしたがメイクに熱中しすぎで授業に遅刻した。朝起きれなくて学校にいけない日が大半だ。


 途中で学校を抜け出した朱里は、公園のベンチで一人ぽつんと座っている女子高生、絃(西川茉莉)を見つけて話しかける。実は絃もADHDで物忘れなどに苦しみ、この日もテストなのに目覚ましをかけるのを忘れて学校にいけなくなったのだ。朱里と違って絃を周囲に隠しているために余計生きづらくなる。ギャルの朱里と真面目な絃と外見は真逆だが2人は仲良くなり…


 【感想】
 僕は正式に診断を受けたことがないので朱里に「なんちゃってADHD」といわれそうですが、ものの片づけはできないし、空気を読むのが苦手。他人の本心が見抜けないからびくびくして、どんくさいと馬鹿にされる。朱里と絃は若干違うタイプのADHDですが、絃のことがまるで自分のことを観ているようで共感性羞恥に陥ってしまいました。


 ADHDと診断されても特効薬があるわけでありません。朱里は学校にカミングアウトしていますが、精神障害者と悪口をいう同級生(SKYLER)ものもいるし、そうでなくても腫れ物にさわれるような扱いはココチ悪い。絃はカミングアウトしていないだけに、余計に配慮されず軽くはぶられたりしています。


 家族も同様で、絃の母親(眞鍋かをり)はバリキャリで、ADHDの診断を恥だと思って娘がだらしないときめつける。勉強できることを唯一の価値だと思っていて、ギャルの朱里とつきあうのを赦そうとしない。朱里も姉の愛里(花岡昊芽)とガチバトルししているし、父親(福沢朗)から将来を考えろと怒鳴られる。絃の前では明るく振舞っているけど、家族の中で孤立している様子はみていてしんどい。


 ただ、大人になると家族の気持ちもわかるのですよね。姉からすれば妹はADHDということで学校はサボれるし、自分のものを勝手につかっても悪びれもしない。両親からしても、すぐ遅刻して約束もすっぽかしてばかりでは、仕事もないだろうと思ってしまう。個性とかきれいごとがあっても、やはり社会はレールから外れたものには厳しい。家族が心配して怒ってしまうのも哀しいし、完全に自分によりそってくれない家族と一緒にする子供たちも哀しい。映画で切り取られた時間のあとも人生は続くわけですから、いろいろもやってしまいます。


 それでも朱里と絃の偶然の出会いから、互いに自分のことをわかってもらえる存在を見つけられたというのは願ってもない幸せ。別にADHDに限らず、こういう人間関係が1人でも得られるかどうかで人生の価値は決まるもの。僕なんか結局、そういう人は見つからなかったから、2人がうらやましいかぎりです。


 また、ちょっとひいてみれば、朱里を障害者扱いする同級生にぶちぎれするギャル仲間(船橋七海、真愛)、2人が学校をさぼって時間をすごす神社の宮司(村野武範)、朱里がいつも買い物する八百屋のおばちゃん(栗田かおり)など、彼女たちのことを自分たちなりに思っている人たちもいるわけで、今後、そういう人たちと出会っていけば人生それほど悪いものではないと祈りたいところです。


 真鍋、村野といったそれなりに知名度がある人がでているわりには、いかにもというふうなインディーズぽくぎこちない演出、カメラワークもみられますが、主演の2人のういういしい存在感が、すべてを超える魅力となっています。 
posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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