作品情報 2022年デンマーク、アイスランド、フランス、スウェーデン映画 監督:フリーヌル・パルマソン 出演:エリオット・クロセット・ホーヴ、イングヴァール・シーグルソン、ヴィクトリア・カルメン・ソンネ 上映時間143分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シアターイメージフォーラム 2024年劇場鑑賞145本
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【ストーリー】
19世紀後半、デンマーク統治下のアイスランド。デンマークの若い牧師ルーカス(エリオット・クロセット・ホーヴ)は布教のため辺境の村に派遣される。しかし、未開拓の大自然の旅は過酷で、途中で通訳(ヒルマル・グズヨウンソン)が海に流されて死んでしまう。現地ガイドのラグナル(イングヴァール・シーグルソン)はデンマーク嫌いで、デンマーク語を放そうとしない。
ようやく目的地の村にたどり着き、デンマーク移民のカール(ヤコブ・ローマン)とその娘のアンナ(ヴィクトリア・カルメン・ソンネ)の世話になることになったルーカスだが、思いもよらぬトラブルに巻き込まれ…
【感想】
どうやって撮影したのかと思うようなアイスランドの大自然の数々。猛吹雪、荒れ狂う冬の海、真っ赤なマグマを出す火山の噴火。特に通訳が海で流されるシーンは、よくこんな映像を撮影できたのかと舌を巻きました。そして、その大自然の一角に細々と暮す人間たちの牧畜を中心とした原初的な生活。
アイスランドは11世紀にはキリスト教になったはずですが、日頃から大自然に接する村人たちにとって、自然は畏敬する存在。ある意味、日本人に似ているかもしれません。一方、ルーカスは若く、布教を成功させれば教会で出世する約束をしていることもあり、キリスト教を至上のものとする傲慢な立ち振る舞いが隠せません。
さらに、宗主国のデンマークのインテリということもあり、ラグナルらアイスランド人への扱いもひどい。本来、アイスランドで暮すのだから片言でも言葉を覚えるべきだし、旅の最初は通訳からアイスランド語の単語を教わってることもありましたが、「雨」の意味のアイスランド語が多すぎると文句をいったり、上から目線は変わりません。写真という当時最新の技術を牧師が駆使するというのもインテリっぽい。
僕のような非キリスト教信者でも、牧師になるぐらいだったら人格者でなければならないだろうに、ルーカスのこんな態度では布教がうまくいくはずもありません。クライマックス直前のラグナルとの会話を観ても、牧師という宗教家というよりも、偉ぶっているデンマーク人という立場がでてしまってました。もっとも、恵まれたデンマークの都会ではこうした彼の弱点は覆われていたのに、厳しい大自然と直面したためにむき出しの素の自分の弱さが現れたとも思えます。僕自身がルーカスの立場でも、どんどん事態は悪化したでしょう。ラストの骨の移り変わるシーンは本当に自然の前では人間はいかに小さな存在か納得させられます。
ただ、長回しロングカットが多いうえ、キリスト教、当時のアイスランドとデンマークの関係などが分からないため、だんだん、眠気が。また、ルーカス、ラグナル、カールらの行動も、彼らの内面描写がないため、どうしてこうなったのか今の日本の感覚では理解に苦しむところがありました。それでも、大自然をスクリーンでみるだけで満足できます。エンディングで流れる男声合唱団のミサ曲も心を打ちました。
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