作品情報 1993年日本映画アニメ 監督:望月智充 声の出演:飛田展男、坂本洋子、関俊彦 上映時間82分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:ル・シネマ渋谷宮下 2024年劇場鑑賞146本
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【ストーリー】
高知の高校2年生、杜崎拓(飛田展男)は平凡だが曲がったことは許せない頑固な性格。夏休み、東京から美少女の武藤里伽子(坂本洋子)が転校してくる。美少女で文武両道だが、標準語のままでお高くとまっているようにみえ、クラスでは浮いていたが、杜崎の親友でクラス委員長の松野豊(関俊彦)は彼女に恋していた。
普段は話すこともなかったが、修学旅行の日、財布を落としたという里伽子が杜崎にカネを貸してくれと頼んできて、バイトの資金が手元にあった彼は6万円も貸す。学校に戻ってしばらくはなしのつぶてだったが、ある日、里伽子の唯一の友人の小浜祐実(荒木香恵)から、彼女に関するとんでもない話が舞い込んできて…
【感想】
田舎の高校のボーイ・ミーツ・ガールはよくあるパターンですが、3人のそれぞれの思いが交錯して、ああ、こんなエモい高校生活が送れたならば良かったのにと、胸をジーンとさせます。スマホがなくて連絡をとるには相手の家に電話をしなければならないとか、公衆電話が重要とか、今の若い人にはピンと来ないでしょうけど、彼らよりちょっと年上の世代の僕からすると何とも懐かしい。
また、坂本のしゃべり方がいかにも時代を感じさせるイントネーション、アクセントであるとともに、ほとんど僕と縁のない他の生徒たちの土佐弁も郷愁を感じさせられます。こういう都会と地方の差というのは今ではずっと解消されているのでしょう。しかし、東京から来た美少女への憧れというのはいつの時代も変わらないのかもしれません。
杜崎と松野が親友になったのも、ともに学校が理不尽にも修学旅行を中止したときに、抗議した仲間だから。今の時代は目立つことを嫌いますから、こんなまっすぐにおかしいことはおかしいといえる人は少ないでしょうね。校長をはじめとする大人のずるさ、論理というのはおっさんになった僕からすれば当たり前で、若い2人がとにかくまぶしい。
キャラクターデザインの近藤勝也は「魔女の宅急便」「コクリコ坂から」などのジブリ作品のキャラデザでしられます。ただ、本作は時代もあってか最近のジブリ調というよりも、東京ムービーの「侍ジャイアンツ」のような感じも受けました。監督の望月は当時「めぞん一刻」「きまぐれオレンジロード」の各劇場版の監督など、青春アニメの第一人者。現在も「怪異と乙女と神隠し」を監督する大ベテランですが、本作の当時はまだ30代で、等身大の若者の心情をリアルにくみとっています。
声優が舞台女優の坂本をのぞけば、本職の声優で固められ著名な俳優を起用していないのはジブリとして珍しい。当時、宮崎駿がスランプの時期で、その間隙を縫って若手を起用したもの。そのため感性のまったく違う宮崎はこの作品に激怒して、宮台真司と論争になったとか。そのせいか、テレビでの再放送は1回だけ、東京での単館上映も今回で2度めという幻の作品に。DVD化はされていますが、映画館で観る機会はまずないからラッキーでした。
原作は当時大人気だった氷室冴子の青春小説で、大学編もあるのですがこちらはアニメ化されていませんし、時代が変わったのでもう無理でしょうね。余談ですが、氷室は僕が高校、大学時代に読んでいて、同じくらい人気の新井素子も好きでした。その新井の大傑作SF「ひとめあなたに」を偶然、先週読んでいて、本作とともに30年前に思いを巡らせていました。「ひとめあなたに」はNHKでラジオドラマになったのですが再放送、もしくは新作で映画・アニメ化しないかな。
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