2024年05月07日

異人たち

 山田太一と大林宣彦の1988年の映画「異人たちの夏」のイギリスリメイク。オリジナルは未見ですが、両親を亡くした僕にとっては非常に心に斧を打ち付けられたような、なんとも衝撃的な作品でした。


 作品情報 2023年イギリス映画 監督:アンドリュー・ヘイ 出演:アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、ジェイミー・ベル 上映時間105分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ日本橋  2024年劇場鑑賞157本



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 【ストーリー】
 脚本家のアダム(アンドリュー・スコット)はロンドンの高層マンションに住んでいるが住民は2人だけの幽霊マンションだった。ある日、偶然、見かけたもう一人の住民ハリー(ポール・メスカル)が部屋を訪れ、酒を飲もうと誘うが人嫌いのアダムは断る。しかし、後日、思い直して彼のところを訪ねる。2人はゲイでたちどころに逢瀬を重ねるようになった。


 一方、両親との思い出をテーマにした作品を執筆中のアダムは、子供のころの写真を見つけて当時住んでいた郊外の家を訪れた。するとそこに12歳の時に死んだはずの両親(ジェイミー・ベル、クレア・フォイ)が、当時の若さで住んでいたのだ。両親はアダムを歓待するのだが…


 【感想】
 オリジナルは未見ですが、オリジナルで女性(名取裕子)が演じていた同じマンションの住民をゲイの男性に変えたのは、スコット監督もゲイをカミングアウトしていますし、ゲイの純愛のほうが彼にとって描きやすかったし、思い入れがあるのでしょう。また、当時のあらすじを読む限りでは、日本版は牡丹灯篭の影響を受けており、本作のほうが心にしっくりきます。


 両親、特に元気なころの両親ともう一度遭えたら自分はなんて話すだろう。中年男のアダムが嬉しそうに両親に甘える姿を観ながら、僕自身、かなうはずのない妄想にふけっていました。孝行したいときに親は無しといいますが、もっといろいろ伝えられたはずなのに。さらに、両親から「お前を誇りに思う」と言われるなんて。アダムと両親の食事シーンをみると、自分の心にグサリと来ます。


 雨や夜、夕方などのシーンが多く、全体的に陰鬱な雰囲気もいい。まさに夢かうつつか、幽霊の両親とのふれあいは本当にあったのか、それとも妄想なのか。いずれにしろアランにとってみればまぎれもない真実なわけです。決して大げさな感情表現をせず、淡々とした親子、家族の日常で喜びを伝える演出はすごいノーブルです。


 そして、ハリーとの関係。正直、男性同士のラブシーンにはそれほど関心がなかったのですけど、アダムにとっては生きる証でもあり、外部との唯一つながるシーンだったのでしょう。それだけに後半にたたみかけるような展開はなんともしんどい。僕だったらどうなるだろうかとここでも思ってしまいました。


 両親は30年前で時間がとまっているので、現代の感覚と微妙にずれていることがちょっとおかしい。でもそのずれを埋めようとするのが親子なんですよね。現実のアダムは12歳以降はつらい思いが多かったのだけど、彼がいかに子供のころに愛されていたのかがよくわかり、これも胸が痛くなりました。


 明度、彩度を落とした映像といい、30年前のシックな曲をレコードでかける音楽の使い方のうまさと言い、なんとも大人の作品と実感させられます。そして、自分自身も子供を持つ身になって、当時の親の気持ちが少し分かりました。大人になるというのはこういうことなのかとしみじみ。


 アンドリュー・スコットはポール・メスカルよりも20歳近く年上だし、両親よりも10歳近く年上なんですが、はにかんだような少年の表情がたまらなくキュート。アラフィフなのに年を感じさせないし、また、大げさなセリフがない静謐な本作ではマストの仕草、表情の演技もたまりません。一方、メスカルはこれだけ売れっ子になるのも納得の寂しげな表情。俳優陣の競演も堪能できました。
posted by 映画好きパパ at 06:03 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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