作品情報 2024年日本映画ドキュメンタリー 監督:木寺一孝 上映時間158分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:渋谷ユーロスペース 2024年劇場鑑賞164本
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【ストーリー、感想】
2人の遺体は山中で見つかり、証拠も少ないため捜査は難航したが、事件発生から2年後に久間三千年元死刑囚が逮捕された。実は同じ小学校で4年前、小学校1年の女児が行方不明になる事件あり、最後に目撃されたのが久間宅だった。2人はクラスメイトだったのである。
警察は92年の事件で目撃された自動車が、久間元死刑囚の車に似ていたうえ、事件後に内部を洗浄して売却していたことを突き止め、中からは被害者と同じO型の血痕がみつかり、被害者から同じ車種の繊維跡が発見された。さらに、被害者の遺体についていた犯人のDNAが当人と一致した。逮捕から裁判まで一貫して反抗を否認したが、アリバイも認められず、死刑が言い渡された。
ところが、死刑執行後に同じDNA鑑定で死刑囚とされた足利事件で、再鑑定により当初の鑑定結果が間違っていたとして無罪になった。飯塚事件も同時期に同手法で鑑定をしているうえ、弁護側は検察側が資料を切り取ったと主張。目撃証言の信憑性も問題視した。しかし、最高裁で再審請求は棄却された。
僕はこの事件についての知識はまるでなかったけど、当時の捜査一課長から駐在まで警察に丹念に取材しており、立場から言って当然かもしれませんが、警察側が当人が犯人であると断言している一方、当初は警察と同調して犯人視していた西日本新聞が、再審請求にともなって捜査に疑念を投げかける報道に切り替えているのに驚きました。本当に犯人なのか、それとも冤罪なのか、謎は永遠に残ります。
一方、NHKのドキュメンタリーは久間元死刑囚の妻を登場させましたが、それ以外の証人などへの取材を行っていません。さらに、WIKIで見た限りですが、彼が警察官に暴行したり、公判で知人がアリバイ工作を頼まれたと証言したなど、彼に不利なことは取り上げていません。元捜査担当者の証言も多数扱っていますが、どちらかといえば冤罪派に近い。ちょっと立ち位置が中立でないのには違和感を覚えました。
一方で、この映画の完成後の今年2月、目撃者の1人が警察に証言は誘導されたと告発しました。警察、検察による冤罪は実際にあります。果たしてこの事件はどうなのか。答えの出ない問いを突きつけられる、思いドキュメンタリーでした。なお、木寺監督は樹木希林に密着した「樹木希林と生きる」の監督でもあり、芸能畑かと思っていたのでこういう硬派な作品を手掛けたというのもちょっと意外。
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