作品情報 2021年ロシア映画 監督:ラド・クヴァタニア 出演:ニコ・タヴァゼ、ダニール・スピヴァコフスキ、ユーリヤ・スニギル 上映時間138分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:横浜ブルク13 2024年劇場鑑賞177本
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【ストーリー】
1981年、ロシアの田舎町で連続殺人事件の捜査責任者として、モスクワのエリート捜査官、イッサ(ニコ・タヴァゼ)が派遣されてきた。若い女性ばかりを狙い、遺体の口に土を詰め、体を切り刻むという残忍な手口。それまでのいい加減な捜査を一新したイッサは7年がかりで犯人を逮捕し、事件は終了したかに見えた。
だが1991年、同じ手口の事件が起きた。前の事件は冤罪だったのか、それとも共犯者がいたのか。命からがら助かった被害者の証言で、ワリタ( ダニール・スピヴァコフスキ)という男が容疑者として浮かぶのだが…
【感想】
日本では華やかなバブル前後の時代ですが、暗いロシアの田舎の画面から漂う貧しさ、そして犯行シーンから始まることで猟奇殺人の恐ろしさが冒頭から目をひきます。さらに恐ろしいのは警察の捜査で怪しいと思った容疑者は片っ端からひっぱってきて拷問にかけます。それも殴るけるはデフォルトで、ビニール袋を頭からかぶせて窒息させるというデンジャラスの極み。今でもこんな強引な捜査をしているのかと思わせられ、うーむおそロシア。
そして官僚社会の特徴というか、犯人もほとんど見込み捜査で逮捕できなければ自分が昇進できないため、日本では信じられないようなずさんな証拠で逮捕してしまいます。序盤、イッサが有能な捜査員かという描写が続いていただけにこうした展開には驚きましたが、長年、捜査は空振りばかり。仕事が忙しくて家族が崩壊寸前、妻に毒を盛られるほどw。さらに上司からの逮捕のプレッシャーとなったら、人間性が壊れてもやむを得ないのかな。ロシアの警察なんてスーパーブラック職場です。
そのうえ、遺族が容疑者を自分の手で殺そうとトラックで建物に突っ込んで来たり、目には目をとばかり、イッサは自分がかつて捕まえた猟奇殺人犯のチェスプレイヤー(ドミトリー・ギズプレヒト)を、ワリタと対決させるなど信じられない展開が続いて先がまったくよめません。猟奇殺人犯も警察側も被害者もキャラクターが濃厚すぎる。でもロシアだったらなんでもありと信じられてしまう。
81年と91年をいったりきたりするうえ、登場人物の紹介や説明セリフがほとんどないため、男女ともだれがどんな役か結構こんがらがりました。それゆえに、最後の展開は禁じてというか、素直にびっくりしました。事前情報はロシアの未解決殺人事件を追う刑事の話しかしらなかったので、「ゾディアック」「殺人の追憶」というようなものを想像していたので、まさかこんな展開になるとは…。
上映館が少ないのはロシアのウクライナ侵略のせいなんでしょうか。ただ、いかにもロシア的な田舎の汚さ、人間関係の重層な愛憎、美人ぞろいの女優と、大地に根差したようなむさい男優たちの対比。そして観ているときはよくわからないけど、ラストになれば納得しかない脚本。埋もれさせるにはちょっと惜しい作品でした。
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