2024年05月26日

碁盤斬り

 名作の人情落語を白石和彌監督が映画化ということで期待していたのですが。非常に真正面から丁寧に撮っていますが、白石監督らしい外連味、時代劇の傑作である小林正樹の「切腹」のような武士社会の酷さ、絶望を観たかったのにという気がしてなりません。


 作品情報 2024年日本映画 監督:白石和彌 出演:草なぎ剛、清原果耶、斎藤工 上映時間129分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ日比谷  2024年劇場鑑賞184本  




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 【ストーリー】
 柳田格之進(草なぎ剛)は上役の柴田兵庫(斎藤工)に盗みのぬれぎぬをきせられ、妻のしのも自害し、今は浪人となって娘の絹(清原果耶)と江戸の寂れた長屋で貧しい生活をしている。囲碁がきっかけで、大商人の萬屋源兵衛(國村隼)と親交を結び、絹も源兵衛の跡取りの弥吉(中川大志)を憎からず思っていた。


 ある日、柳田が源兵衛と一局打っている際、藩からの使者の梶木左門(奥野瑛太)が、盗みの犯人が柴田であるうえ、柴田が柳田の妻しの(中村優子)を無理やり襲ったことが自害の原因と伝えられる。柳田は敵討ちをしようと準備を進めていた。ところが、源兵衛の家で50両の大金が消える事件があり、弥吉は柳田を疑う。絹は父の汚名をそそぐために
吉原の女将、お庚(小泉今日子)のところに身を売り、50両を手に入れる。お庚は大みそかまでに50両を返済しないと絹に客をとらせると言い渡す。果たして柳田は期限までに敵討ちを成功させたうえ、身の潔白を証明できるのか…


 【感想】
 頑固一徹で清廉潔白に生きる侍の役は草なぎにあっていますが、意外にも過去に将軍の役はあるものの一介の侍の役は映画、ドラマではなかったのでは。そんな経験のなさをものともせずに普段は静かに、そして、肝心のところには激情をみせる役柄を好演。共演も清原のいかにも和風の顔の清楚でおきゃんで父親思いの娘ぶり、清濁併せのむ国村、小泉のベテラン2人の怪演、そして斎藤の悪役ぶりとキャストは見事な配置。クライマックスの柴田との殺陣も見応えがありました。ただ、予告編でみせちゃうのはいかがかと思いましたが。


 一つ難しかったのが囲碁を知らないと分かりにくいこと。草なぎ自身も碁をしらないそうですけど、囲碁のシーンが結構多いうえに登場人物の心理も表しており、僕も囲碁を知っていればもっと深く楽しめたと残念でなりませんでした。


 ストーリーも人情噺が原作なだけに、まあそうなるだろうなという展開。柴田兵庫は落語にはでてこないので、彼に時間を取られた分、絹と弥吉の関係がそれほど描かれずに分かりにくくなったりしました。なんか無理やり大団円というところ。エピローグのエピソードはすっ飛ばして、いきなりエンドロールのシーンに入っても良かったと思います。


 また、柳田が生真面目なためか、映画の作りも生真面目だったことも印象的。音楽や撮影も本当にまっすぐで渋い王道という感じ。生真面目なのはいいけれど、鑑賞後の印象が薄くなってしまいました。やはりラストも原作の落語から離れたシビアなものにすれば良かったのにと、うまいけれど惜しい作品でした。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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