2024年07月09日

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

 アレクサンダー・ペイン監督作品らしい、1970年の全寮制学校を舞台にした心温まるヒューマンドラマ。まんべんなくよくできた秀才型の作品といえましょう。


作品情報 2023年アメリカ映画 監督:アレクサンダー・ペイン 出演:ポール・ジアマッティ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ 上映時間133分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズシャンテ  2024年劇場鑑賞244本




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 【ストーリー】
 1970年の12月、ボストン郊外にある全寮制のバートン校はクリスマス休暇で教師も生徒も浮かれていた。だが、母親が再婚したばかりのアンガス・タリー(ドミニク・セッサ)は母と義父が新婚旅行にいってしまい帰宅が許されず、他の数名の仲間と寮に居残り。頑固で嫌われ者の教師ポール・ハナム(:ポール・ジアマッティ)、寮母のメアリー・ラム(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)が監督役となる。


 やがて他の生徒も寮を去り、アンガス、ポール、メアリーの3人だけがクリスマス休暇の間、一緒に過ごす羽目に。最初は打ち解けなかった3人だが、徐々に相手の悲しみを知るようになり…


 【感想】
 オープニングの映画会社のロゴから1970年ふうのレトロな感じ。さらに、長髪などのファッションで、70年代の世界にすぐにひきこまれます。男子校で小学生から高校まで通っている感じで、金持ちの子弟で生意気な生徒も多く、鼻持ちならぬエリート意識が漂う感じです。


 そんななか、厳格で周囲にも打ち解けないポールは教師からも生徒からも嫌われています。しかし、クリスマス休暇で3人がいろいろ過ごすうちに、なぜ、彼がそんな人間になったのかがよくわかります。また、メアリーは息子がベトナムで戦死したばかりで悲しみに暮れているという設定ですが、これも息子がバートン校の卒業生で、本来は大学に勧めるはずが親が貧しい黒人ということで徴兵されたという社会的背景があきらかになります。実際、イラク戦争などでも、金持ちの子どもが遊び惚けている傍らで貧しい家庭の子どもが、復員後の学費を軍隊が出してくれるために入隊したことが社会問題となっていました。


 そして、両親からのまっとうな愛をうけられなかったアンガス。3人の孤独な心が徐々に溶け合っていくのは心地が良い。それは生徒と教師という尊敬であると同時に疑似的な家族にもなっていくという不思議な関係。最初は厳格でルールからはみ出ることを許さなかったポールが、2人に親密になっていく様子はなんともしんみりします。


 ダヴァイン・ジョイ・ランドルフがオスカーの助演女優賞を受賞していますが、個人的には映画初出演のドミニク・セッサの思春期ならではの傷つきやすさ、繊細さを表現した演技が印象的。ジアマッティもペイン作品の常連であり、こうした影がある役柄が良く似合います。また、70年という時代設定にあったファッション、音楽もおしゃれ。ラストも含めてじんわりくる作品でした。
posted by 映画好きパパ at 06:42 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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