2024年07月14日

潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断

 1940年、撃沈した敵船の乗組員を救助した潜水艦の実話。イタリアの戦争映画はこれまで観たことがなかったので興味深かった。


作品情報 2023年イタリア、ベルギー映画 監督:エドアルド・デ・アンジェリス 出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マッシミリアーノ・ロッシ、シルヴィア・ダミーコ 上映時間121分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ座間  2024年劇場鑑賞249本



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 【ストーリー】
 1940年、イタリア海軍の潜水艦「コマンダンテ・カッペリーニ」は大西洋でベルギーの貨物船を撃沈する。当時、ベルギーは中立国だったが貨物船から先に砲撃して交戦となったのだ。


 コマンダンテのサルヴァトーレ・トーダロ艦長(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は、漂流して助けを求めた貨物船の10数人の乗組員を救助、安全地帯まで運ぶことを決断する。親友の副長、ヴィットリオ・マルコン(マッシミリアーノ・ロッシ)ら部下の反対を押し切ってのことだった。しかし、食料も居住スペースもないまま詰め込められ、双方の乗組員の雰囲気は最悪に。しかも、過積載のため潜航することはできず、英軍を避けながら中立地帯まで48時間の航海をしなければならなくなり…


 【感想】
 「コマンダンテ・カッペリーニ」は本作ではでてきませんが、のちに日本に引き渡されて終戦まで生き延びています。何人かのイタリア人乗組員はそのまま日本軍に協力したそうで、2022年に二宮和也主演でフジテレビ系の新春ドラマスペシャルとして放映されています。また、劇中、トーダロ艦長は日露戦争時の明治天皇の発言を引用しており、なにげに日本とも関連のある船でした。


 さて、本作で興味深いのは冒頭、トーダロが妊娠中の妻リナ(シルヴィア・ダミーコ)と愛し合うシーンから始まること。暴力的な性をテーマにした「先生の白い嘘」では女性のヌードはありませんでしたが、本作では戦争映画なのに冒頭からヌードで愛し合うシーンから始まります。戦地に趣く夫と愛し合うというのは人間の本能でしょう。バスタブでバックハグをするトーダロの姿はセクシーであるとともに、内なる悲壮さも垣間見られ、一幅の絵のようでした。さらに、出航もリナをはじめ乗組員の妻や恋人が見送りに来ており、機密保持も何もあったものじゃないけど、愛を重視するイタリアらしいとも思いました。


 そこから一転、潜水艦内の日常が描かれます。暑いうえむさくるしい髭男たちが下ネタをいいあったり、食事をめぐって口論になったりと閉鎖空間とはこういうものかと思われます。そして、時々英軍の戦闘機に襲われたり、機雷地帯につかまったりなど戦闘シーンがでてくることで、戦争中の潜水艦の日常がリアルに描かれているようでした。


 中盤からは救出した貨物船の乗組員との話がメインになってきます。交戦で乗組員が戦死したこともあり、お世辞にも友好的とはいえません。マルコンは「ドイツなら見捨てる」といいましたけど、戦争映画の傑作「Uボート」では確かに漂流している敵乗組員を見捨てていました。しかし、トーダロの統率力は高く、普段から彼を尊敬している乗組員たちは内心不満を持ちながらも、いうことを聞いていきます。また、コメディリリーフ的なコック、ジジーノ(ジュゼッペ・ブルネッティ)と、貨物船の乗組員でイタリア語通訳のジャック(ヨハネス・ヴィリックス)とのレシピ交換など、徐々に和やかになっていくのは、戦火のなかでも人間性があったようでほっとしました。ラストに字幕で語られる戦後のエピソードや映画自体がイタリアとベルギーの合作ということをみると、戦争とは一時期に国家も国民も狂ってしまい、そのなかでどう人間性を保てるのかと考えてしまいます。冒頭の字幕に、ウクライナに助けられたロシア水兵のエピソードが入っているのも、なんとも印象的でした。


 自分が戦死するだろうと思いつつも、海の男としての矜持を忘れず、暖かくも厳しい父親のように乗組員の面倒をみるトーダロ役のピエルフランチェスコ・ファヴィーノは、イタリアを代表する俳優だけあってカリスマ性は抜群。そのほか、乗組員役の俳優たちも荒くれ物の海の男を体現。一方で、リナ役のシルヴィア・ダミーコのむんむんとした色気もすごかった。そしてもう一人の主人公である潜水艦はイタリア海軍の協力で、実物大のものを再現したそう。潜水艦映画に外れなしのことわざどおり、渋い作品でした。なお、食事をしたくなるようなユニークなエンドロールが、途中で日本語訳がなくなったのはなぜ?
posted by 映画好きパパ at 07:50 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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