作品情報 2022年インド映画 監督:キランラージ・K 出演:ラクシット・シェッティ、サンギータ・シュリンゲーリ、ラージ・B・シェッティ 上映時間164分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズ木場 2024年劇場鑑賞250本
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【ストーリー】
ダルマ(ラクシット・シェッティ)は少年のころに家族全員を事故で亡くし、孤独なまま大人になった。工場に勤務しているが友人も恋人もおらず、短気で粗暴なため近所でも周囲の住民から「ヒトラー」と呼ばれて恐れられていた。
ある日、家の前でラブラドール・レトリバーの野良の子犬がバイクにはねられひん死の重傷を負う。ほっておけずに獣医のアシュウィン(ラージ・B・シェッティ)に手当てしてもらうが、ダルマが飼い主と勘違いされたうえ、犬も懐いて家に居座ってしまう。やんちゃな犬に手を焼きながらも、毎日世話をしているうちに心も癒されすっかり仲良しに。ところが1年ほどたって犬が病気になった。アシュウィンに診せたところ、重病で助からないという。犬がテレビで雪のシーンをみると大喜びしていたのを思い出し、ダルマはバイクを改造してサイドカーにチャーリーと名づけた犬を載せて、雪のある北部の山岳地帯まで連れていくことを決める。一方、動物福祉協会の女性職員、デーヴィカ(サンギータ・シュリンゲーリ)は、ダルマがチャーリーを虐待していると誤解して彼らの後を追いかけていき…
【感想】
インド映画も日本で多数上映されるようになりましたが、本作はインド南部のカンナド語映画というまだあまり上映されていないタイプ。映画自体もあまり洗練されていません。序盤はダルマの粗暴ぶりに観ていてイライラ。何しろ、近所の子どもが遊んでいるボールが飛んで来たら、それを目の前で真っ二つに割って燃やしてしまうのですから。近所の住民に同情してしまいます。さらに、インドのリアリズムかもしれませんが、食事にハエがたかっても平気で食べたりとか、室内飼いの犬の糞が部屋のあちこちに散らかっていたりとか、ちょっと衛生的にひいてしまいました。
また、チャーリーの飼い方も、インド南部の饅頭イドゥリを食べさせたり、しつけをまったくしていないのでいたずらしまくったりと、これまた日本の感覚では、えーという感じ。ただ、40年ぐらい前に僕の家でも犬を飼っていたけど、当時も残飯を食べさせたりしつけもろくにしていなかったから、今の日本の感覚でおかしいと思っても良くないのでしょうね。
そんなダルマがチャーリーや、チャーリーが大好きな近所の幼女アドリカ(シャーヴァリ)の存在によって、次第に優しい心を取り戻していくというのがいい。それまで孤独でただ何も夢も希望もなく生きるダルマのやさぐれた様子がみるみる変わっていくのは、まさにペットセラピー効果でしょう。ダルマがチャップリン好きで、犬の名前をチャーリーと名づけたことから、本来は優しく寂しい心持をもっており、それだからこそ彼の幸せは観ているこちらもうれしくないます。
他のインド映画と違うのは、ストーリーにあった歌は流れるもののダンスは一切なし。また、犬をが虐待する悪徳ブリーダーや騒音をだしてチャーリーを怖がらせるバンドをとっちめるシーンもありますけど、アクションシーンがほぼ皆無というのも意外に思いました。デーヴィカも若い美人女優が起用されているけれど、ロマンスというよりもともに犬のために活動する同志という位置づけでしたし。
ともあれ、ラクシット・シェッティのインド映画の主役らしいカリスマ、迫力とチャーリーを前にメロメロになる落差は楽しい。旅の途中で出会う良い人、悪い人さまざまな人たちとのかかわりも面白いロードムービーとしてもしっかりできています。ただ、バイクでなくて飛行機でインド北部にいけばいいと突っ込みたくなりましたが。また、犬がこんなに飼い主のことを好きなのかと観ているこちらもうれしくなります。ラストもひとひねりあって、思わずうるっときてしまいました。犬は飼いたいけど死んだら悲しいし、映画の中で飼い主と犬との愛を楽しむだけで満足できるからいいかな。
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