作品情報 2023年イタリア、フランス、スイス映画 監督:アリーチェ・ロルヴァケル 出演:ジョシュ・オコナー、カロル・ドゥアルテ、イザベラ・ロッセリーニ 上映時間131分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2024年劇場鑑賞280本
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【ストーリー】
1980年代のイタリアの田舎町。イギリス人のアーサー(ジョシュ・オコナー)は行方不明になった妻の実家に転がり込んでいる。義母のフローラ(イザベラ・ロッセリーニ)は口やかましい老女で、音楽教師をしているが弟子のイタリア(カロル・ドゥアルテ)を家政婦のようにこち使っている。
アーサーには地中に埋められている古代の墓地を発見するという特殊能力があった。町のチンピラ、ピッロ(ヴィンチェンツォ・ネモラート)たちはアーサーを利用して、埋葬品を売りさばいて小遣い稼ぎをしていた。ある日、アーサーはとんでもない墓を見つけて…
【感想】
古代の遺跡がごろごろしているのはイタリアならではでしょうか。日本でもアーサーのような才能を持って京都当たりをうろうろすれば大発見ができるかもしれません。ただ、この超能力をすごいものと扱っておらず、ダメな中年男が何となくできてしまうというふうに描かれているのが特徴です。
また、フローラの家は広いけど古いうえ、田舎町も近代化から取り残されたようでぱっとしません。一方、後半の闇ブローカーのシーンでは上等なクルーザーでの航海が描かれますけれど、特殊な才能を持っていても格差とはいかんともしがたいのか、ロルヴァケル監督の前作「幸福のラザロ」同様、シビアな貧富の差を寓話めいた特殊能力で覆い隠してくれます。
アーサーは過去にとらわれていて、終盤、過去の亡霊たちと出会うシーンはぞくぞくっとしました。だから過去の恋が忘れられずに、イタリアとの仲も進まないまま。また、町の住民たちも仲間にいれようとしているけど、アーサーはそういう前向きなことは苦手なよう。ずばっと何か教訓がある作品ではありませんが、アーサーのそういう姿勢をみると生きづらいだろうなということは伝わってきます。なんともいえない不思議な心地になりつつ、アーサーのダメ男ぶりについつい共感してしまいました。
まだ携帯電話もろくにない80年代を舞台にしており、イタリアの陽気な自然と貧乏でも気にしない住民とうらはなに、いかにもイギリスからきたアーサーの異物感をジョシュ・オコナ―が好演。「幸福のラザロ」をみて次回作への出演を直訴したそうですが、見事にはまっています。また、イザベラ・ロッセリーニが完全に老けていておどろきました。
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