2024年08月17日

新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!

 大好きな小林啓一作品とはいえ、予告編で主役の藤吉夏鈴のあまりにもな活舌、イントネーションに不安を感じて、実際、はじめのうちはどうするんだと思ってました。しかし、役柄上、初々しさがよくあっており、観終わってみたらさわやかな青春映画に仕上がっていました。


 作品情報 2024年日本映画 監督:小林啓一 出演:藤吉夏鈴、石あかり、高嶋政宏 上映時間98分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマズ座間  2024年劇場鑑賞285本



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 【ストーリー】
 文学少女の所結衣(藤吉夏鈴)は櫻葉学園高校に入学。あこがれの高校生作家、緑町このはが在籍するという文芸部への入部を希望した。ところが、入部試験の最中に非公認の部活、新聞部部長の杉原かさね(石あかり)が取材のために飛ばしたドローンと衝突。試験を受けられずに落ちてしまう。


 文芸部長の西園寺茉莉(久間田琳加)は、結衣に緑町このはが覆面作家で、唯一学校新聞に登場したことがあると教えられ、新聞部にスパイとしてもぐりこみ、このはの正体を突き止めれば入部を許すといわれる。新聞部は部長のかさねと副部長の恩田春菜(中井友望)の2人だけ。学園を私物化している理事長の沼原(高嶋政宏)の悪事を暴こうとしていた。結衣はかさねに記者として鍛えられながら、学園のスキャンダルとまみえていく。


 【感想】
 トロッコとは、汽車になれないのに引っかけて半人前の記者という意味。パンフレットで小林監督が遠まわしで語ってますが、大人の事情かもしれませんけど映画初出演の藤吉の演技はお世辞にも上手いとはいえません。ファンなどは存在感をほめていますけれど、おなじ坂道系の映画デビュー作だと「あさひなぐ」の西野七瀬や白石麻衣、「響」の平手友梨奈と比べると明らかに落ちるとおもってしまいました。もう少し脇かドラマで経験をつませればよかったのに。


 しかし、周囲で若手女優でも芸達者がそろっていることで藤吉の演技が浮くことはありません。高石は役柄もありますがさすがの貫禄。結衣をきっちりとひっぱるかさねになり切るとともに、清濁併せのみつつ巨悪に切り込む格好良さ、周囲を引き付ける磁力はさすが。また、中井、久間田は自らの主演作と違って明らかに藤吉を立てるために控えめの演技をしています。さらになんといっても、ラスボス役の高嶋がもう好き放題、大げさな演技をしていてその毒に細かいことはどうでもよくなります。


 そのうちに、初々しいけれど一生懸命な役柄に藤吉がどんどんはまっていって、観ているこちらもいつのまにか応援していました。まさにトロッコ効果ですね。学園の巨悪を新聞部が暴くというのは荒唐無稽ですが、沼原がやっていることは現実社会で政治家や官僚がやっているあくどいことの相似形。最近はマスゴミとか呼ばれて新聞も読まれなくなりましたけど、社会を良くするために必死に戦う姿は、現実の新聞記者もこうなってほしいと思ってやみませんでした。変に思想がかった記者が現実では目立っているので、かさねや結衣の爪の垢でもせんじて、きちんと巨悪に立ち向かってほしいものです。


 クライマックスも含めて、リアルさにはかける演出が続いていましたけど、ジュブナイルとしてみれば十分な仕上がり。ブルーピリオドじゃありませんけど、恋愛も試合の勝利も病気もなくて、思わず甘酸っぱく感じられる青春映画に仕上げているのはさすが小林監督です。また、主要キャストが女性ばかりで、脅しや懐柔にも負けずに悪事をはたらく高嶋たちおっさんと戦う雄姿はなんともエモかった。


 パンフレットは1300円と高めですが、脚本がのっているほか現役の高校新聞部員たちのコメントが載っているので見ごたえがあります。新聞部員が同世代に新聞の大切さを伝えてくれれば、世の中の報道もちょっとはましになるのではとも思ってみてました。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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