2024年08月25日

心平、

 原発事故の傷跡が残る2014年の福島を舞台にしたヒューマンドラマ。原発事故が平凡な家族にどんな影響を与えたのか、決して暗くないけど考えさせる内容です。妹役の芦原優愛が素晴らしかった。


 作品情報 2023年日本映画 監督:山城達郎 出演:奥野瑛太、芦原優愛、下元史朗 上映時間105分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿KSシネマ  2024年劇場鑑賞296本



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 【ストーリー】
 2014年、福島第一原発の近くにある村に住む大村一家。長男の心平(奥野瑛太)は軽度の知的障害でなかなか仕事を見つけることができない。頑固な父の一平(下元史朗)は、原発事故で農業ができないと畑を売り、警戒区域の警備員をしながら酒浸りの日々だった。


 地元のプラネタリウムで働く長女のいちご(芦原優愛)は、都会に転職したいものの家族を見捨てるわけにいかず、内心うんざりしながら家事をしていた。そんな心平が商店街の傘屋の娘由香(影山祐子)に恋をした。だが、心平の障害を知らない由香は彼を気味悪く思い…


 【感想】
 原発事故のあとの風評被害もあり、大変な思いをした福島の農家。本来だったら父親と一緒に農作業をする分には問題がなかった心平も働かなければならない。しかし、障害者を雇用する余裕は地元の企業にもないし、彼自身も働くことの意味がわからない。そして、家族の世話のせいで自分を犠牲にしたと信じているいちごも含め、未来にたいしてまったく希望がもてません。


 農村だから家のしきたりや男女差別が根強く残っています。あれだけいちごに世話になっているのに、感謝一つしない男たち。でも彼らとの良い思い出もある一方で、母親(蜷川みほ)は不倫をしたうえ子どもたちを捨てて出ていったこともあり、いちごはとても許せることができません。この家族間の愛憎を正面から、でもあまり暗くならずに描いている山城監督の演出には好感をもてました。


 後半、家族はバラバラになりかけます。しかし、幸せだったころを思い出してもう一度まとまろうとする姿は本当にエモい。そして、経済的には苦しく、時には互いのことをうざく思っても、最後にはやっぱり信頼しあえる家族の姿が本当にいとおしくなりました。


 心平が知的障害役というのは、ある意味、ジョーカーみたいなもんで観客も文句がつけずらいのですけど、チンピラ、悪役が多い奥野が珍しくピュアな役をやっていたこともあり、やっぱり応援したくなりますよなあ。芦原のけなげな姿にもぐっと来たし、下元のベテランらしい演技にも惹かれました。インディーズ出演率が高い川瀬陽太が、これまた善良な役ででていたのもツボに。タイトルの心平のあとの、は、その後に続くセリフを観客がそれぞれ考えてほしいというもの。僕は「心平、人生思ったほど悪くないぞ」と呼び掛けたくなりました。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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