2024年08月30日

ぼくの家族と祖国の戦争

 戦争の際、敵国の老人や子どもをどう扱うのか。同調圧力も含め、何が正義か考えさせられる秀作ですが、子どもが主人公ということもあってつらい部分も多かった。


 作品情報 2023年デンマーク映画 監督:アンダース・ウォルター 出演:ピルー・アスベック、ラッセ・ピーター・ラーセン、カトリーヌ・グライス=ローゼンタール 上映時間101分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい  2024年劇場鑑賞301本




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 【ストーリー】
 第2次大戦末期のデンマーク。ドイツから大量の避難民が押し寄せ、地方の市民大学体育館に500人以上の難民が収容された。学長のヤコブ(ピルー・アスベック)は困惑するが、デンマークはドイツの占領下にあり、命令に従うしかなかった。


 ドイツ軍は敗走しており、避難民にはろくに食事や医薬品もなかった。伝染病が流行る中、ヤコブや妻のリス(カトリーヌ・グライス=ローゼンタール)は迷った末、食料や医薬品をこっそりわたす。それが町の住民から「売国奴」と批判され、小学生の長男、セアン(ラッセ・ピーター・ラーセン)は学校でいじめられた。やがて戦争が終わり…


 【感想】
 ナチスに占領されたデンマークでは、住民は抑圧され命すら奪われました。ナチスへの怒りと憎しみは深い。ヤコブ一家と親しい青年、ビルク(モーテン・ヒー・アナスン)も父親を理不尽に殺され、レジスタンスに加わっていました。そんな住民たちにとって、ドイツ人は女子供だろうが敵なわけで、飢え死にしようが病死しようが自業自得です。


 一方、ヤコブは自分の管轄している施設で赤ちゃんや老人が次々と死んでいくのを目の当たりにするのが耐えられません。最初は物資の提供を拒否していましたが、セアンが同年代の子どもと親しくなったこともあり、ドイツ難民という集団でみるのではなく、個人個人の人間としてみるようになります。そこが、接点のなかった他の住民と違うところ。戦時中もそうですが、今の日本の移民排斥とかをみると、接点がないので恐怖、憎悪の対象になるというのは人間の本質化もしれません。


 観客の僕からすると、特に子どもたちが犠牲になっていく様子は耐えられません。また、ヤコブはドイツ軍を助けたのでなく、弱者を人道的に助けただけです。一方で、ビルクたち住民の怒りも理解できなくはない。ドイツへの怒りのはけ口を、自分より弱い難民たちにぶつけ、それを助けるヤコブ一家も同罪であると断じてしまうのも、自然な感情でしょう。何が正解かわからないときに、どういった行動をするべきなのか深く考えさせられます。


 また、登場人物は聖人君子ではなく、ヤコブもリスも難民を助けるかどうか、その時々で考えはぶれるし、セアンはある意味、両親を裏切ってビルクに協力したりしています。そのへんもリアルでした。セアンへのいじめは目をそむけたくなりますし、子どもたちが犠牲になる様子も心が痛みます。それでも、今なお似たような現実が起きていると考えると、決して目を背けてはいけない作品だと実感しました。
posted by 映画好きパパ at 06:13 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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