2024年09月07日

ボストン1947

 ベルリン五輪でアジア人として初のマラソン金メダリストとなった孫基禎(ソン・ギジョン)を中心に、戦後、朝鮮が国際スポーツ界に復帰するきっかけとなった1947年のボストンマラソンを描いた感動作。国家とスポーツのありかた、民族の独立などいろいろ深く考えさせられます。


 作品情報 2023年韓国映画 監督:カン・ジェギュ 出演:ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ 上映時間108分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ座間  2024年劇場鑑賞313本
 


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 【ストーリー】
 戦後、日本から独立したものの米軍の軍政下におかれた朝鮮。国は貧しくスポーツなどやる余裕はなかった。だが、ベルリン五輪で銅メダルをとり、現在は若者たちのコーチをしているナム・スンニョン(ペ・ソンウ)が、ソン・ギジョン(ハ・ジョンウ)にマラソンの指導を依頼してくる。


 ベルリン五輪で金メダルを取ったものの、朝鮮民族の英雄として祭り上げられることを恐れた日本から引退を強いられたギジョンは、戦後も酒浸りで荒れた生活をしていた。しかし、若いころの自分の記録を破った天才ランナー、ソ・ユンボク(イム・シワン)の存在を知り、再び陸上界に戻ることを決意する。ところが、朝鮮は米軍の軍政下にあるため、国際大会への出場が認められず、戦後、行われるロンドン五輪にも招待されなかった。そのため、まずボストンマラソンに出場して、朝鮮が独立国であることを知らしめようとするのだが、参加まで難題が山積みし…


 【感想】
 ベルリン五輪で金メダルをとりながら、日本名を強要されたうえ、表彰式の日章旗と君が代にショックをうけたギジョン。選手としての最盛期は戦争でつぶされ、失意の日々だったということは日本人の僕から見ても容易に分かります。映画も表彰式で流れる君が代に驚くシーンから始まっており、政治とスポーツ、戦争とスポーツのありかたを考えさせられました。


 さらに、日本から独立したとはいえ、米軍の指示に逆らえない戦後の朝鮮。しかも、一部の金持ちは日本の植民地のころに日本と結託して儲けていたわけで、朝鮮チームが国際スポーツ界に復帰することにまったく関心がありません。このへんはいかにも悪役という感じなんですが、現実もそうだったろうと思えてならない描写でした。


 米軍幹部も非協力、遠征費も金持ちたちがスポンサーにならずボストンマラソン参加が頓挫しそうになります。しかし、韓国に好意的な米軍のスメドゥリスポーツ課長(モーガン・ブラッドレー)や、ギジョンの友人でアメリカを代表するマラソンランナーのジョン・ケリー(ジェシー・マーシャル)の協力もあり、何より、もう一度祖国に国際舞台で活躍してもらいたいという名もない民衆たちの応援で、参加のメドがたちます。この辺りのシーンは思わず観ているこちらの胸が熱くなるほど。


 いざボストンにいっても難題はいくつもあります。選手の中にはアジア人を差別するものもいます。また、米軍軍政下ということで、朝鮮の国旗をユニホームにつけることは認められず、星条旗のユニホームでした。こうしたなか、ギジョンたち3人は優勝と朝鮮国家を国際社会に認めてもらうために懸命に頑張ります。


 マラソンシーンでは、イム・シワンの走りや筋肉が本物ぽく役作りに驚きました。また、大会の実況がある意味当然なんですが、英語のラジオというのもリアルな感じ。レースの展開も含めて、本当に次から次へとアクシデントと、それを乗り越えようとする3人の姿に、観ている僕も懸命に応援したくなりました。


 戦後まもないソウルや、マラソン会場のボストンはSFXを駆使して再現したそうだけど、非常にナチュラルに撮られており、特にボストンは実際に当時の町でロケをしたみたい。やはりスポーツものは会場も重要ですよね。


 ハ・ジョンウはさすがの主役ですが、3人のなかである意味一番人間的といえるナム・スンニョンを演じたペ・ソンウがすごくいい。ぺは飲酒運転で一時、芸能界を干されていたそうですが、その苦労が演技に重みをましています。また、在米朝鮮人で、アメリカで一行の面倒をみるペク・ナムヒョン役のキム・サンホの相変わらずの存在感も韓国映画らしくてよかった。
posted by 映画好きパパ at 06:55 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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