2024年09月08日

愛に乱暴

 吉田修一原作の不倫小説の映画化。江口のりこの女優としての実力を見せつけられ、満足の逸品。しかし、不倫というのはどこまで問題なのか考えさせられてしまいます。


 作品情報 2024年日本映画 監督:森ガキ侑大 出演:江口のりこ、小泉孝太郎、風吹ジュン 上映時間105分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ座間  2024年劇場鑑賞315本



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 【ストーリー】
 専業主婦の初瀬桃子(江口のりこ)は夫の真守(小泉孝太郎)とともに、夫の実家のはなれに暮らしている。母屋には義母の照子(風吹ジュン)が一人で暮らしていた。家事、義母の面倒、パートで元いた会社の石鹸教室の講師と完璧な主婦を目指していた桃子。


 だが、表面的にはうまくいっていてもちょっとずつ歯車が狂い始める。やがて真守が若い女性の三宅奈央(馬場ふみか)と不倫しているのではと疑い…


 【感想】
 桃子が完璧になろうとすればするほど、ちょっとずつ歯車がくるっていく様子を淡々と描写する演出はなんとも意地が悪い。家事や義母との愚痴を夫にこぼしても、真守は上の空。照子も露骨な嫁いびりはないものの、そこは他人同士で自分の息子がかわいいこともあり、端々からイラっとする言動が続きます。せめて子どもでもいたら違ったのでしょうが、不妊治療も桃子だけが一生懸命で、おそらくセックスレス。


 なぜ桃子が完璧な主婦を目指すのか、理由は後半に明かされます。そして、真守や照子の態度についても。正直、最初は桃子が神経質なだけなのかと思っていましたけど、終盤の秘密は驚かされました。まさに人を呪わば穴二つということでしょうか。また、桃子の教室の担当者である浅尾(青木柚)、元上司の鰐淵(斉藤陽一郎)といった脇役も、彼女の精神をやすりで削るような言動で、こういう人は実際にいそうなだけに、えぐかった。


 夫を愛するがゆえに、少しずつ狂気のスイッチが入っていく様子を江口が好演。まさに彼女にしかできないうつろな笑い、そして、なめまわすようなカメラワーク。執拗に出てくるカラスや唐突なシャワーシーンなど、とにかく、一見、普通の恋愛映画のようで、でも少しずつくるっているというのは桃子の心理にあわせているのかもしれません。


 不倫は悪いことというのが世の中の良識です。でも、完全に壊れてしまった夫婦を無理やり引き延ばすということは、地獄のような家庭に閉じ込められるということ。真守も同情するところは少ないのですけれど、夫婦とは何か、愛情とは何かを考えさせられました。馬場ふみかの出番がもう少し多かったら、もっと好みになったかも。
posted by 映画好きパパ at 07:41 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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