作品情報 2022年フランス映画 監督:ギヨーム・レヌソン 出演:ドゥニ・メノーシェ、ザール・アミール=エブラヒミ、ヴィクトワール・デュボワ 上映時間93分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマ座間 2024年劇場鑑賞316本
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【ストーリー】
交通事故で妻を亡くし、自らも重傷を負ったサミュエル(ドゥニ・メノーシェ)は幼い娘を友人に預けて、故郷のイタリア国境にある村にあり、イタリア側にある別荘で一人失意の時間を過ごしていた。
一方、別荘にはアフガン人でフランスに不法入国しようとしていた女性チェレー(ザール・アミール=エブラヒミ)が隠れていた。素人なのに冬のアルプスを一人で逃げようとする彼女を放っておけず、サミュエルは道案内をする。だが、地元の自警団が不法入国者を追っていて…
【感想】
不法移民の越境や協力者、弾圧しようとする政府や右派といった作品は、ベラルーシ・ポーランド国境を描いた「人間の境界」という傑作が今年あったばかり。本作の場合、フランスを代表する演技派のドゥニと「聖地には蜘蛛が巣を張る」でカンヌ女優になったザール・アミールの2人の演技を堪能できますが、脚本的には首をひねる部分が多々ありました。
まず、サミュエルがチェレーを助ける動機が分かりにくい。妻を失ったから、ここで同年代の女性を死なせたくないというのでしょうけれど、それだったらもう少しやりようがあったはず。また、自警団もあくまで敵役としか描かれていませんが、これだけ不法移民の問題が西ヨーロッパを騒がせているのに、そんな単純な描き方でいいのかと思ってしまいました。
単なる逃亡だけでは退屈かと配慮したのかもしれませんけど、サミュエルたちと自警団のアクションもあります。でも、普通に考えたら自警団は抵抗するサミュエルたちをみれば警察に応援を頼めばいいのに、なぜアクションがあったのかよくわかりません。サミュエルたちがまいたと思った先に自警団が現れるのも失笑してしまいました。
日本と違って陸つづきなだけに、不法移民問題の深刻さは日本の比ではありません。一方で、チェレーはアフガンで教師をしていたためタリバンに殺されそうになり逃亡したという設定で、やはりこうした難民たちを西側がどのように受け入れるのか、真剣に考えなければならないでしょう。にもかかわらず、一方的に自警団を悪者に描くアクションにしてしまっては、それこそ分断をあおるだけだし、移民排斥派の極右がフランスで台頭しているのも、映画人のようなインテリへの反発があるのではと思ってなりません。
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