2024年09月10日

ゴミ屑と花

 深夜に働くゴミ収集車の男女作業員2人を通して観た、都会の人々の生活や哀感。30分の中編ですが、非常に濃密な作品。僕らの生活になくてはならないのに、目を向けていなかった現実がわかります。長編にしてもらってほしいなあ。なお、テアトル新宿では大黒監督の最新作の中編、ユウジッ!!と同時上映です。
 
 作品情報 2023年日本映画 監督:大黒友也 出演:植木祥平、花柳のぞみ 上映時間30分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:テアトル新宿  2024年劇場鑑賞318本



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 【ストーリー】
 ゴミ収集車の新人作業員、尾崎浩一(植木祥平)は研修のため、年下だが仕事では先輩の橋本花(花柳のぞみ)について回って、深夜の横浜でゴミ収集作業を行う。


 作業員をバカにして絡んでくる酔っ払いのサラリーマン、分別方法が分からずトラブルになるフィリピン人、疲れた作業員に黙ってペットボトルのコーヒーを差し入れするコンビニ店長。何人もの人たちと触れ合いつつ、2人はゴミ収集作業を続けていく。


 【感想】
 タクシー運転手を主人公にした同種の映画はあるけれど、ゴミ収集員というのは見たことがありません。ゴミは早朝だすので、昼間に回収していると思ったら、事業ごみなので深夜に収集することもあるのですね。ゴミの収集がなければ僕らは暮らしていけないのに、彼らをバカにする酔っ払いは見ていて哀しい。また、尾崎はそこにいないかのように無視されるといいますけど、それは僕自身もそういうところがあるなと思い反省しました。


 尾崎も橋本もそれぞれ悩みを抱え、傷ついたことがあってこの仕事につきました。研修のため2人組で回っていますが、本来は1人で深夜の町を回らないとならない。心に傷を追った人にとっては自分を見つめなおす時間にもなりますし、昼間には見られない世の中の人たちの、いわば本音の部分もみられます。本当に複雑で奥の深い仕事だとよくわかります。実際に一晩でこれだけ多数のエピソードがあるのは多すぎる気もしますが、一つ一つはリアルにあってもおかしくないもの。抑制されたタッチがかえって、こちらの心に食い込んでいきます。


 橋本のセリフで、ゴミも人もリサイクルして生き返らせることができるというのがありましたが、たった30分の上映時間で観客に説得力をもたせられるというのは、緻密な脚本と深夜の大都会を抒情的かつ乾いたタッチで収めた大黒監督の力量なんでしょう。シュレッダーにかけた紙ごみの始末など、うまい使い方だなと関心しました。


 植木、花柳ともに初めて認識する俳優ですが、役柄にぴったり。特に花柳の凛としたようなたたずまい、植木の普通なら見逃していそうなことまで行き届いた心遣いなどは、実在する人のように見えました。特集上映で観る機会は限られると思いますが、多くの人に見てもらいたい作品です。


 なお、併映のユウジッ‼は、売れない役者兼ボクサーのユウジ(武田祐一)がYouTubeの企画で因縁のボクサーと対戦するお話。社会の日の当たらないところでもがいている人が懸命に生きるという意味では「ゴミ屑と花」に通じるところがありました。実際にボクシングをしているという武田の独特の存在感も魅力。ただ、ボクシングが身近でないだけに、個人的には「ゴミ屑と花」のほうがすきでした。
 
posted by 映画好きパパ at 06:00 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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