2024年10月12日

西湖畔に生きる

 マルチ商法にはまってどんどんおかしくなる母親と、何とかして止めようとする息子の闘いを描いた中国映画。中国の拝金主義がこんなに広がっているのは驚き。何かと制限のある中国映画でよく撮れたと思います。


 作品情報 2023年中国映画 監督:グー・シャオガン 出演:ウー・レイ、ジアン・チンチン、チェン・ジエンビン 上映時間118分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿シネマカリテ  2024年劇場鑑賞364本



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 【ストーリー】
 杭州の山奥の村で茶摘みをしているタイホア(ジアン・チンチン)とムーリエン(ウー・レイ)母子。タイホアの夫はムーリエンが幼いころに女を作って家をでてしまい、女手一つで大学までだしたが、杭州の田舎ではろくな仕事もない。


 タイホアは茶畑の地主のチェン(チェン・ジエンビン)と恋に落ちるが、周囲から反発されて村を出て、杭州の大都市に引っ越す。そこで生活のために友人の誘いでマルチ商法にはまった彼女は、ムーリエンが止める声にも耳を貸さず、どんどんおかしくなっていく。一方、ムーリエンがやっと決めた就職先も、老人に高額商品を売りつける悪徳会社だった…


 【感想】
 僕は中国の地理に疎いのだけど、杭州は中国八大都市の一つで2023年にはアジア大会が開かれました。中国一の大手IT企業アリババの本社があり、古都として中国内では大人気の観光都市でもあります。一方、映画にもあるように郊外にでれば豊かな自然が広がっています。


 共産党というのは貧富の差がないという思想のはずなのに、日本よりもはるかに貧富の差がある格差社会。茶摘みは朝から晩まで働く重労働ですが、マルチ商法の最高幹部になれば
年収1080万元(約2億円)にもなると知り、タイホアは目の色を変えて健康商品を売って回ります。家族、親戚、友人、小中学校の同級生とどんどん売り先を広げろというマルチの戦略は日本と同様でしょう。地縁血縁が日本よりもまだ残っているだけに、マルチもより食い物にしやすいのかもしれません。


 ムーリエンは顧客からのクレームで、思い切って悪徳商法を辞める決断ができました。しかし、タイホアはマルチ会社のなかで営業成績が良いと褒められ、ちやほやされることで完全に人間が変わってしまいます。それまで田舎の気の良いおばちゃんで、メイクもしなかったのが、パーマにケバイ化粧を満載。哀しいのは彼女も薄々騙されているとわかっているのに、「これまでの人生でだれも私を褒めてくれなかった。みんなから下にみられていた」という暗い感情がマルチにはまる原動力になっていること。他のマルチ参加者も家が貧乏だったり、がんにかかったりなどがはまるきっかけで、心の弱さに付け込むマルチの恐ろしさがまざまざと現れます。


 また、大きなホールでガンガンの音楽や、大声での唱和で参加者を興奮させてマルチにはまらせる手口も日本同様のもの。これでは田舎の気の良いおばちゃんも雰囲気に流されて、はまっていくなあという手口は観ていて感服しきりです。もちろん、中国映画なので悪は最後、警察に捕まるのですけど、これが悪が逃げ切るようなバッドエンドだったら面白かったのにと痛感しました。


 とにかくジアン・チンチンの演技が見事につきます。真面目でおとなしい働き者ゆえに、どんどんカネに狂っていく姿は圧巻。また、美しい緑と幻想的な霧に包まれた農村と、近代的だけどおカネがすべてな都市との対比も見事です。マルチの恐ろしさとか日本人がみてもよくわかるし、母子の哀しい関係も描かれており、いろいろ考えさせられる秀作でした。梅林茂の音楽もよきかな。 
posted by 映画好きパパ at 06:56 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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