2024年11月01日

二つの季節しかない村

 3時間以上あるトルコの会話劇ということで、睡魔と戦うのかとひやひやしましたが、登場人物が欠点だらけということで興味を惹かれ、最後まで飽きませんでした。なかなかの傑作ですが。好悪がわかれるでしょうね。


 作品情報 2023年トルコ映画 監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 出演:デニズ・ジェリオウル、メルヴェ・ディズダル、ムサブ・エキジ 上映時間198分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町  2024年劇場鑑賞393本



ブログ村のランキングです。よかったらポチッと押してください
にほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村

 【ストーリー】
 トルコ東部の山村の小学校で教師をしているサメット(デニズ・ジェリオウル)は女子児童へ優しいため、女子からの人気が高かったが、男子からの人気は低かった。ある日、サメットと彼の同僚でルームシェアをしているケナン(ムサブ・エキジ)が、児童に不適切な接触をした疑いで教育庁から事情を聴かれる。


 都会の学校に転任したいサメットは、友人の紹介で他校の女性教師、ヌライ(メルヴェ・ディズダル)と知り合う。彼女は反体制運動に参加しており、テロの影響で足が不自由だったが、美人で聡明なためサメットはすぐに惹かれる。しかし、ケナンと3人で食事をしてから、ヌライとケナンの様子が気にかかり…


 【感想】
 トルコの現状をあまり知らなかったのですが、トルコ東部はクルド人の居住地域。劇中であからさまに言っていませんが、クルド人差別も遠因としてあるように感じられました。さもなければ、サメットがあそこまで山村を嫌う理由がわかりません。また軍警察が住民を弾圧する一方、サメットを歓迎するのもそうした事情なんでしょう。


 物語の柱は2つ。一つはサメットの学校での対応です。弁明とともに教育庁に密告した相手を探すサメット。どうやら、女子のリーダーでサメットが特にひいきをしていたセヴィム(エジェ・バージ)が関連ありそうです。この後のサメットの行動は日本の教師だったら考えられないほど、子供じみています。クルド人への差別、女性蔑視というもろもろが絡んでいることがうかがえますけど、国が違うとはいえ、こういう教師にあたったら大変悲惨。


 一方、もう一つの柱であるヌライをめぐる三角関係?も興味深い。特にヌライが反体制派で、サメットとの間でデモなど政治的な行動をすることに意味があるかないかを議論するのは、ちょうど衆院選前に見たこともあり、日本でもこういった議論が十分通用すると思いました。一方、サメットがケナンを出し抜いてヌライを口説くなど、ここでもサメットは同情できません。しかし、等身大の人間という意味では、リアル感がありました。


 サメットを中心とした会話劇が中心。この欠点が多い人物を悪役としないで主人公にするというのは、なかなかみられないタイプの作品です。人間のずるさ、卑小さ、欲望が見られますが、僕自身にもそういうところがあるだろうと反省させられました。俳優は皆さんはじめましての方々ですが、特に子役ながらエジェ・バージの意思の強さを感じさせる目力はなかなかのもの。メルヴェ・ディズダルは本作でカンヌの女優賞に輝いていますけど、バージの印象のほうが強かったです。
posted by 映画好きパパ at 06:06 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。