作品情報 2024年日本映画 監督:白石和彌 出演:山田孝之、仲野太賀、阿部サダヲ 上映時間155分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2024年劇場鑑賞400本
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【ストーリー】
1868年、越後新発田藩(現在の新潟県北部)は戊辰戦争で官軍につきたかったが、周囲を米沢藩など佐幕派に囲まれており、何とか佐幕派を追い払って官軍を迎え入れようとした。家老の溝口内匠(阿部サダヲ)は内心を隠して佐幕派の若手侍、鷲尾兵士郎(仲野太賀)に国境の砦で官軍を足止めするよう命じる。小藩で人数が少ない為、死刑囚10人で決死隊を作り、鷲尾の配下とする。
妻を襲った侍を殺したために死刑囚となった駕籠かきの政(山田孝之)をはじめ、10人は砦を守り抜いたら釈放してやるといわれて、鷲尾の下で官軍を迎え撃つ。ところが溝口の予想を裏切り、決死隊の大活躍で官軍を打ち破ってしまい…
【感想】
男性の登場人物は単純な鷲尾をのぞいてすべて悪人。もっとも私利私欲というよりも、溝口は藩を守るため、鷲尾は佐幕という自分の思想を守るため、政たち死刑囚は自分の命を守るためというやむを得ない事情があるのですけれど、それでも裏切りまた裏切りというのは面白い。
また、溝口は佐幕派の奥羽越列藩同盟の斉藤(駿河太郎)と官軍の司令官の山縣(玉木宏)のどちらにも頭が上がらない。さらに、藩主の溝口直正(柴崎楓雅)は幼く、自分の背に藩の命運がかかっている。そうなると、死刑囚などはごみのような使い捨て。さらに死刑囚だけでなく、鷲尾のような藩のはねっかえりも一緒に始末しようというのもわからないでもありません。
一方、政は自分さえ助かればよく、とにかく脱出することしか考えておらず、他の囚人たちからも白い目でみられるほど。しかし、政の行動が結果として決死隊に敵の存在を知らせたりするなど、役に立っているところは主人公らしい。その彼が鷲尾や、弟分で頭の弱いノロ(佐久本宝)に感化されていくあたりは、エンタメとしてうまくツボを押さえています。
10人のうち、女性のなつ(鞘師里保)をのぞいた9人は多士済々。怪力の辻斬り(小柳亮太)、若いころは某藩の指南役を勤めていた剣豪の爺っつぁん(本山力)、医師のおろしあ(岡山天音)など、各自の特徴をいかして籠城をしていきます。それぞれの特徴、見せ場をしっかりと描いているため、上映時間が長くなりましたけど、その分、見ごたえがでています。
また、脇役ですが家老の腹心の部下で家老の娘、加奈(木竜麻生)と婚約している入江数馬(野村周平)の存在が、箸休めになります。登場人物で唯一いっていいほど、罪を犯していない加奈が木竜の凛とした雰囲気もあって物語性を高めました。
アクションも戊辰戦争だけあって、剣や銃だけでなく大砲も飛び出るもの。砲弾が直撃して体が木っ端みじんになったり、処刑で首を切り落としたりする様子は、白石監督が嬉々として悪趣味な描写をしているのが伝わる感じで楽しませてくれました。ただ、時代劇なので、主人公たちがあまりにも強いのはやむを得ないのかもしれませんが、戦術に工夫していた中盤までと違い、特にラストの立ち回りは個人的にはあいませんでした。
それでも白石監督らしく、多彩な顔ぶれの俳優陣、そして陰謀と絶望しかない戦争への苦味などが伝えられ、前作の「碁盤斬り」よりもスケールアップして楽しめました。役柄的にも山田より仲野のほうがおいしかったかな。
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