作品情報 2021年アメリカ映画 監督:ローレン・ハダウェイ 出演:イザベル・ファーマン、エイミー・フォーサイス、ディロン 上映時間97分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ渋谷 2024年劇場鑑賞402本
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【ストーリー】
大学の女子ボート部に入部したアレックス・ダル(イザベル・ファーマン)。猛烈な努力で練習に取り組む。1年からレギュラー入りを狙うアレックスは、ボート経験者でやはり熱心に練習に取り組むジェイミー(エイミー・フォーサイス)をライバル視する。
「もっとリラックスしろ」というコーチのピート(ジョナサン・チェリー)や、助教で恋愛相手となるダニ(ディロン)のアドバイスも聞かず、ひたすら練習に打ち込むアレックス。やがて、上級生の1人が怪我をして、ジェイミーとレギュラーの座をかけてあらそうことになったのだが…。
【感想】
日本のアニメや映画でよくあるパターンが、才能があるからといってろくに練習しないのにすぐに試合に勝ってしまう。「がんばっていきまっしょい」もそうだし、スポーツでないけど、「BLUE GIANT」なんかも素人のジャズミュージシャンがあっという間に一流となったのに鼻白んでしまいました。しかし、本作は勝利のためにはとことん本気で死にものくるい。練習が苦しくて嘔吐するどころか、失禁までしてしまうのですから。
新入生(ノーヴィス)のなかには、「友達作りにきました」なんて甘いことをいう人もいましたが、体育会系の厳しい練習についていけずに次々と脱落していきます。アレックスとジェイミーはそのなかでも午前5時から朝練をはじめるなど、ひたすらストイックな毎日。また、コーチから目標タイムを聞いてそれを紙にかいたあとに、もっと早いレギュラーのタイムを聞いて上書きするなど、とにかく成績に貪欲なことに驚きます。
さらに、「困難だからこそ挑戦するのだ」というJ.F.ケネディの言葉を座右の銘にするアレックスは勉強も他の学生たちの3倍はしているうえ、同性のダルと恋愛をするなど、体がいくつあっても足らないというほどの忙しさ。移動時間は終始走っており、これは人生で体力がもっとも充実している18歳前後でないととても無理だなと思ってみていました。
そんな彼女が真っ先に捨ているのは人間性。コーチにもボートはチーム競技だといわれますが、他人はすべてライバルか、練習が足りないと見下す相手。自分自身との戦いと言えば聞こえはいいですが、味方も自分自身しかいない。シングルスカルならともかく、これではチームメートから浮いちゃうどころか、憎しみすら向けられます。気のいいジェイミーですら、ライバル認定したとたん、敵としちゃうなんてまさに狂気としかいいようがありません。そして、ラストは文字通り、命がけ。
子役時代の「エスター」で鮮烈な印象を飾ったイザベル・ファーマンは、本作でも完全にいっちゃった女子大生役を何かがりうつったように好演。ハダウェイ監督は「セッション」の音響を担当して、「セッション」ですら生ぬるいと、自らの体験をもとに本作を制作したそうで、やはりスポーツの世界は奥が深い。筋肉質の女性たちの汗まみれの練習シーンの美しさ、不穏さを終始感じさせるバイオリンが特徴のBGMなど、作品全体から伝わる狂気、努力・練習とは何かを考えさせられるいっちゃったぶりがとてもたまりませんでした。
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