2024年11月10日

八犬伝

 江戸時代に書かれた滝沢馬琴の大河小説「南総里見八犬伝」を、作者たちの様子と、物語そのものをそれぞれ映像化。豪華キャストの迫力あるシーンを楽しめました。

 作品情報 2024年日本映画 監督:曽利文彦 出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳 上映時間149分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:109シネマズゆめが丘  2024年劇場鑑賞405本



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 【ストーリー】
 江戸後期。戯作者の滝沢馬琴(役所広司)は友人の葛飾北斎(内野聖陽)に新作の南総里見八犬伝の構想を話していた。雄大なスケールに北斎は興奮する。しかし、口うるさい馬琴の妻、お百(寺島しのぶ)はもっとカネになるものを書くよう悪口を言い、父を慕う息子の鎮五郎(磯村勇斗)と口論になっていた。


 南総里見八犬伝は室町時代後期を舞台にした物語。安房の領主、里見義実(小木茂光)は邪悪な女、玉梓(栗山千明)の陰謀で窮地に陥るが、娘の伏姫(土屋太鳳)が自らを犠牲にして玉梓をとらえる。処刑された玉梓は怨霊となって里見家を呪い、伏姫は呪いをとくため八つの珠に願いを託して亡くなった。それから18年たち、産まれながらに珠を持つ八人の剣士が運命に惹かれあうように集まった。そして、蘇った玉梓の陰謀から里見家を守るために立ち上がる。


 【感想】
 馬琴と北斎のパートと、八犬伝パートが交互に描かれます。八犬伝は完成まで28年もかかった超大作。口うるさい妻の相手や病弱の息子の看病に追われながら、たまに訪れてくる北斎にストーリーを語って、その部分も実写化されるという構造になっています。


 馬琴パートでは、家庭問題だけでなく虚の世界と実の世界を描く作家としての悩みも描かれます。鶴屋南北(立川談春)の四谷怪談に悪人ばかり出てくる一方、八犬伝は勧善懲悪の物語。現実で善が悪に負けることがあるから、フィクションの世界は勧善懲悪にしたい馬琴と、フィクションを絵空事にしないためにも悪人が活躍するべきという南北の小説観は現在にも通じるものがあるとみました。また、武士出身の馬琴の武家へのあこがれも、身分社会だった江戸時代の実情をあらわにしています。


 また、馬琴の偉大さをわからない妻の百にあきれる一方、珍しく誠実な青年役の磯村演じる鎮五郎の将来を心配する馬琴の親心にも感心するなど、家庭パートもしっかり描かれています。そしてひょうひょうとした北斎が、馬琴に頼まれても本の挿絵をかかないのに、気が向いたら自分用に八犬伝の名場面を描くという芸術家ぶりも楽しめます。終盤は鎮五郎の妻のお路(黒木華)も加わりますが、黒木は幸薄そうな時代劇の町娘役はぴったり。


 一方、八犬伝パートは派手なVFXをつかってアクションを多用。さらに、渡邊圭祐、鈴木仁、水上恒司ら若手の売れっ子をずらりとそろえているのが見どころ。原作にもあるのでしょうが、犬坂毛野(板垣李光人)が女装して仇討ちをしようという場面は、同じ板垣が昨年の大河「どうする家康」でも似たような役柄をしていただけに笑いました。


 そして、栗山の最強ラスボスぶりや、今年大活躍の河合優実が、八犬士の中心の犬塚信乃(渡邊)と運命に翻弄される恋人浜路を演じて、豪華俳優陣もみとれるばかり。久々にスケールの大きな痛快時代劇(十一人の賊軍も制作費がかかっていましたが、痛快とはいいがたい)に満足です。ただ、十一人の賊軍の時も思いましたけど、主人公側が強すぎてゲームのように相手を倒すだけのアクションって、好みじゃないんですよね。原作が江戸時代にできているのでしかたないのですけど。アクションシーンは前述のように迫力があるので、そういうのを気にならない人は完全にたのしめるのではないでしょうか。


posted by 映画好きパパ at 06:42 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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