2024年12月02日

チネチッタで会いましょう

 ヴェネチア、カンヌ、ベルリン映画祭で受賞経験のあるイタリアの名匠、ナンニ・モレッティが、自ら主演になり現在の映画業界への危機感と、何よりもあふれる愛を注いだ異色作。話がとっちらかってますけど、ラストは感動でジーンときました。

 作品情報 2024年イタリア映画 監督:ナンニ・モレッティ 出演:ナンニ・モレッティ、マルゲリータ・ブイ、シルヴィオ・オルランド 上映時間96分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:新宿武蔵野館  2024年劇場鑑賞437本



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 【ストーリー】
 イタリアのベテラン監督、ジョヴァンニ(ナンニ・モレッティ)はこだわりが強すぎて、映画がなかなか撮影できない。ようやく5年ぶりの新作にとりかかったが、ヒロイン役のヴェラ(バルボラ・ボブローヴァ)は言うことは聞かずに勝手に演技をし、1950年代が舞台の作品なのに、スタッフは当時の歴史を何も知らず、現場は大混乱。


 さらに、娘のエマ(ヴァレンティーナ・ロマーニ)が紹介した彼氏は自分より年上のポーランド大使(イェジー・ストゥー)。極めつけは長年、映画プロデューサーを務めてきた妻のパウラ(マルゲリータ・ブイ)が、これ以上、映画にこだわるジョバンニにはついていけないと、離婚を切り出したこと。公私とも混乱する中、果たして新作は完成するのか…


 【感想】
 ナンニ・モレッティの現在の映画界への不満と、それを乗り越える映画愛をとにかく伝えたかったのでしょう。どこまで本当かわかりませんが、口ばかりで仕事がろくにできない若いスタッフ、生意気なスターとの口喧嘩、こだわって作っているのに今の観客に受け入れられない、さらにプロデューサーやスポンサーとのいざこざなど、映画界ではさもありそうな話のオンパレード。唐突に表れたネットフリックスのエージェントがとにかく偉そうで、映画を見下しているところなんか、ネットフリックスの実名をだしているだけに、モレッティ監督も実際に言われたのかも。


 一方で、スコセッシ、コッポラ、キェシロフスキーをはじめとする尊敬する映画人、映画についての言及が多い。また、劇中映画ではサーカスが重要な舞台となっていますが、それを含めてフェリーニの影響を指摘する評論もあります。そして、いきなり登場人物たちが踊りだしたり、極めつけはラストのパレードに、過去のモレッティ作に出演したイタリアの著名な俳優たちがセリフもなしにカメオ出演するなど、トラブルはあるけれどやっぱり映画はいいものだというのが伝わってきました。ジョヴァンニの映画論は、僕は必ずしも納得しないけれど、非常に興味深い。まあ、実際にこんな人物がいたらスタッフは大変でしょうけどね。それでも、昔のやり方は通用しなくても、明るい明日へ向かって頑張ろうというのは良いメッセージ。


 劇中劇では1950年代のイタリア共産党の地方幹部(シルビオ・オーランド)が主人公。彼をはじめとする共産党がソ連を妄信する教条主義者でなければ、歴史も変わったということもこめています。このへん、イタリア史には詳しくないのだけど、年齢的にモレッティは共産党に思い入れがあったのかもしれません。さらに調子のよいフランス人のスポンサー、ピエール(マチュー・アマルリック)、制作現場に大挙して押し寄せる韓国業界人など、イタリア映画からみた外国映画界の状況もうかがえます。


 ジョヴァンニのあまりに映画オタクの視野の狭さに辟易とするところもあったとはいえ、自ら主演してモレッティも満足でしたでしょう。最初は戸惑いましたけど、音楽の使い方が絶妙で、イタリアのヒット曲のパレードは曲名こそしりませんが、ストーリーにあってましたし、唐突なアレサ・フランクリンもはまっていました。エンドロールでは思わずリズムをとってしまいました。イタリア映画好きの方にはお勧めですけれど、なんとも奇妙なコメディとはいえます。時間の関係で川崎チネチッタで鑑賞できなかったのはちょっと残念。
posted by 映画好きパパ at 06:21 | Comment(0) | 2024年に見た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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