作品情報 2024年日本映画 監督:武内英樹 出演:永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜 上映時間110分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:川崎チネチッタ 2024年劇場鑑賞449本
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【ストーリー】
人間の体内には37兆個の細胞が働いている。しっかりものの女子高生、漆崎日胡(芦田愛菜)の体内では、新米赤血球(永野芽郁)が失敗ばかり。一方、白血球(佐藤健)やキラーT細胞(山本耕史)、NK細胞(仲里依紗)らが大活躍して病原菌を退治する様子をみて、赤血球は自分が役に立ってないとしょげるが、白血球から、みんな大切な働きをしているのだから、自分の役割を果たすように励まされる。
一方、日胡の父親の茂(阿部サダヲ)は不健康な生活で体内もドロドロ。こちらの新米赤血球(板垣李光人)はブラックな環境で苦労していた。シングルファザーで口は悪いが娘のことを何よりも大切に思っている茂。だが、そんな親子の前に難病の陰が迫っていた…
【感想】
序盤はアニメのエピソードを実写化。ドジな新米赤血球役の永野の明るさは物語にピッタリ。一方、佐藤の希望もあってアクション監督に「るるうに剣心」シリーズの大内貴仁を起用したこともあり、「るるうに〜」に匹敵するアクションシーンの連続を堪能できました。さらに、坂東愛之助、小沢真珠といった知名度のある俳優が、ド派手な細菌の被り物をして、佐藤も白塗りの顔になるなどアニメの世界をそのまま実写化したのにふさわしい大仰な演技がなんとも癖になります。血小板たちもアニメ同様、幼女が大量に出ていて癒されます。邦画ではめずらしいほどの大量のエキストラを投入したことも奏功しています。
ただし、アニメでは宿主の人間の描写はなかったので、本作で日胡と茂が日常生活を見せ、健康的な食生活を送っている日胡の体内はディズニーランドのようなヨーロッパ風のきらきら世界、茂の体内は昭和のくすんだ裏町という対比をだして、より、健康の重要性をわからせてくれたのは徳永友一脚本のうまいところ。僕自身、観ていて食生活に気を付けなくてはとぞっとしました。
特に、阿部が下痢に襲われてトイレに駆け込むシーンは、僕も時々あることなので身につまされました。体内で排便を我慢する外肛門括約筋役に一ノ瀬ワタルが起用され、相撲力士姿の内肛門括約筋と乱闘するというのは、一ノ瀬がネットフリックスの「サンクチュアリ -聖域-」で力士役で主演を務めていることもあり、受けました。これに限らず、永野−佐藤は朝ドラ「半分、青い」(2018年)コンビ、阿部―芦田は「マルモのおきて」(2011年)の疑似親子役と、ドラマファンにはニヤッとする配役が多いのも特徴です。
中盤までは楽しく、アニメと比較しながら観られたのですが後半にはいっていきなり日胡が白血病になってシリアス度が増します。幼児なんかトラウマになりそうな展開に。体内と体外をそれぞれ移すため、人間ドラマとしては薄味なんですが、それでも阿部と芦田、そして日胡の好きな先輩役の加藤清史郎の演技がうまくて、どんどんはまっていきます。
極めつけはがんに侵された時の体内の様子。難病映画、ドラマは洋の東西を問わず多いですけれど、そのときの体内の様子を描いた作品は皆無でしょう。がんの進行で白血球たちの絶望的な戦いと、そのなかでも酸素を運ぶという赤血球としての役割をまっとうしようと必死にもがく永野。さらに、突然変異した白血病のがん細胞(Fukase)が、幼いころに白血球との絡みをもたせたことで、単なる悪役ではなくて、病気の恐ろしさ、どうしようもなさをわからせてくれます。極めつけはがん治療の意味で、これだけ著名な作品を大幅に改変するシリアスな内容に驚きかつ、自分の体を守ってくれる細胞たちに心の底から感謝したくなりました。年末年始にふさわしい邦画大作の傑作といえましょう。
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武内監督作品だから実写化も期待したけど、泣かせる作品は初めてかも。
出演者たちの熱演もよかったです