2025年01月24日

アンデッド/愛しき者の不在

 北欧の鬱ホラー。ゾンビ映画の導入部分だけで1本の映画を作り上げた感じでしょうか。愛するものがアンデッドとして蘇った場合、どう対応するのか。


作品情報 2024年ノルウェー、スウェーデン、ギリシャ映画 監督:テア・ヴィステンダール 出演:レナーテ・レインスヴェ、ビヨーン・スンクェスト、ベンテ・ボアシュム 上映時間98分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:キノシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞16本



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 【ストーリー】
 突然、オスロで原因不明の大規模停電など不気味な現象が起きた。幼い息子エリアス(デニス・オスターランド)を亡くしたばかりのアナ(レナーテ・レインスヴェ)は悲しみに暮れていた。だが、アナの父のマーラー(ビヨーン・スンクェスト)が墓まいりにいったところ、墓穴から音がして慌てて掘り出すと、エリアスは息をしていた。家に連れ帰ったが、エリアスは話もしなければ表情も変わらない。


 同じころ、ダヴィッド(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)は妻のエヴァ(バハール・パルス)が交通事故で亡くなったとの連絡を受けて、病院に駆けつけた。ティーンの娘フローラ(イネサ・ダウクスタ)は、喧嘩したのが最後の別れとなり、激しく後悔する。しかし、とまったはずのエヴァの心臓が動き始め、医者も原因がさっぱりわからないという。さらに、老婦人のトーラ(ベンテ・ボアシュム)はパートナーのエリザベート(オルガ・ダマーニ)の葬儀を始めようとした。しかし、彼女が生き返ったのに気が付く…


 【感想】
 家族やパートナーを失った3家族の前に蘇った死者が現れる。しかし、心臓は動いしているのに、言葉も感情も失ったよう。しかも、医学でも解明がつきません。物語は終始不穏な音楽、決して晴れ間を見せない北欧の陰鬱な天気のもと、3家族のとまどいと、このあとに来る悲劇を予感させながら進みます。


 劇中、フローラはゾンビを退治するゲームをしていたので、ゾンビに関する知識はある。しかし、蘇った母親がゾンビかどうかなんて考えもできない。僕も含めて、親が亡くなったときにもっとああすれば良かったと後悔することはありますけど、それを晴らす機会が来たからです。しかし、エヴァは文字通り生きるしかばねのようになんの反応もしない。


 登場人物は蘇った死者に対して、それぞれ異なる反応をとります。これは身近な人が亡くなったときの対応に何が正解かというものはなく、十人いれば十通りの感情があるからでしょう。邦画やハリウッド映画では大騒ぎするかもしれませんが、本作の登場人物はとまどうにしろ喜ぶにしろ、感情を表に出さずに受け入れようとします。しかし、肉体は生きているようなのに、中身は生前とは別物なわけで、よけいに自分の感情をどう処理すればいいのか、観ているこちらも混乱してきます。


 そして、終盤になるとこの後悲劇が起きそうな雰囲気が徐々に強まります。しかし、映画はあくまでも暗く淡々とした描写を重ねていきます。原作者のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストは北欧鬱ホラーの「ぼくのエリ 200歳の少女」「ボーダー 二つの世界」の原作者でもあります。暗い画面にスローテンポで好みが分かれる作風だと思いました。
posted by 映画好きパパ at 06:04 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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