作品情報 2024年日本映画 監督:岸善幸 出演:菅田将暉、井上真央、中村雅俊 上映時間139分 評価:★★★★★(五段階) 観賞場所:イオンシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞19本
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【ストーリー】
新型コロナ感染が話題になり始めた2020年。過疎の漁村、宮城県宇田浜では空き家対策が問題となっていた。役場職員の関野百香(井上真央)は自分が保有している空き家を、貸家としてネットに掲載する。
それを見た東京の大企業に勤める西尾晋作(菅田将暉)が早速申し込み、現地に到着。しかし、コロナ感染を防ぐため東京の人間との交流は禁じられていた。困った百香は、西尾に空き家に2週間引きこもって町の人に姿を見られないようにしてほしいと命じる。しかし、釣りバカの西尾は、魚とだったらOKと毎日、釣りにでけけてしまい…
【感想】
あれからもうすぐ5年ですが、当時の異常者がまざまざと思い出します。特に地方ではコロナに感染すると徹底的に嫌われ、都会からの人の移動を拒否するような動きが出ていました。狭くて人のうわさがすぐたつ田舎のウザさが気になる百香があせるのも無理はありません。
しかし、西尾の鈍感力はすさまじい。最初は地元民と近づくのを恐れていましたが、なし崩し的に交流が進みます。これは田舎の両面性ですけど、排他的な一方で、気のいい老人が多いのも東北的。このへんのさじ加減をユーモア交じりで描くのはさすがクドカン脚本です。
コロナあるあるで始まりましたが、宇田浜は震災で大きな傷を負いました。それを当事者でない東京モノがどう扱っていいのか。この映画は同じ宮城県出身で、NHKの「あまちゃん」で震災をいち早く取り上げたクドカンの一つの到達点といえるのではないでしょうか。そこへコロナの社会の変容まで加わるのですから、異次元といえるほど脚本の出来がすごい。
もちろん、難しいことばかりではありません。西尾と百香のじれったい人間関係、親切な老人代表で、一見頑固だけど実は心優しい百香のおとうさんの関野章男(中村雅俊)、何かと食べ物を差し入れる西尾の隣人村山茂子(白川和子)、そして村人たちのたまり場の倉部健介(竹原ピストル)の居酒屋に集まる面々などなど、それぞれが生き生きとして、あるあるといいたくなるようなキャラクター造型になっています。半面、西尾の会社の大津社長(小日向文世)をはじめ、東京の人間のキャラクターが紋切り型になっていたけど、さすがにこれは東北と対比するための設定なんでしょうね。
笑ってしんみりする脚本も良いですけど、食べ物が何よりもおいしそう。西尾が「おもてなしハラスメント」とうれしい悲鳴を上げますけど、数々の魚料理はとにかくおいしそうですし、キノコ、山菜といった山の幸もみていて食べたくなります。こういう日本の田舎料理というのは日本人の郷愁を誘ってくれますよね。そして、菅田の食べ方が非常においしそうかつうれしそう。やっぱり売れっ子役者の演技派すごいですねえ。ただ、現実ではリモートワークがどんどん減っているのが残念です。
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