2025年02月08日

邪悪なるもの

日本では珍しいアルゼンチンのホラー映画。幼児がひどい目に遭ったり、結構、日本やアメリカ映画ではタブーになっている描写がどんどんあったのは珍しい。登場人物の愚かさが悲劇の連鎖を呼ぶという構造もグッドだけど、普通に人類はとっくに滅びていてもおかしくないだろうというツッコミをずっとしていました。


作品情報 2023年アルゼンチン、アメリカ映画 監督:デミアン・ルグナル 出演:エセキエル・ロドリゲス、デミアン・サロモン、シルビナ・サバテール 上映時間100分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ブルク13 2025年劇場鑑賞39本



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 【ストーリー】
 アルゼンチンの山中に住むペドロ(エセキエル・ロドリゲス)とジミー(デミアン・サロモン)の兄弟は、深夜犬が騒ぐために翌朝、様子を見に行ったところ、バラバラに引き裂かれた遺体を発見。さらに、隣家のウリエル(パブロ・ガラルサ、コンサル・ガラルサ)が悪魔憑きの被害に遭い、体がぶよぶよに膨れているのを発見する。


 驚いた2人は地主で町の有力者のルイス(ルイス・ジェンブロウスキー)とともに、ウリエルを遠く離れた場所へ捨てようとする。悪魔憑きは伝染して、人間の理性を狂わせてしまうのだ。そして、ペドロは町に住む前妻のサブリナ(バージニア・ガロファロ)の家に行き、子どもたちとともに逃げようと計画するのだが…


 【感想】
 冒頭、全く説明がないけど、悪魔憑きは世界中に蔓延しているらしい。しかも、まず動物がおかしくなって、人間に感染する。感染したら魂を抜き取られ悪魔に操られてしまう。治療法がないどころか、感染者(動物を含む)を殺すと、殺した人間に感染するのです。ゾンビ映画ですらゾンビは退治できるのに、悪魔は無敵。だから、とっくの昔に文明が崩壊していてもいいのに、なぜか、被害は一定区域でとどまっているよう。この設定の矛盾も含めて、独特の魅力をはなちます。


 冒頭、バラバラ遺体をみせるとともに、アルゼンチンの荒々しい自然や主人公であるペドロとジミーの荒くれぶりがたっぷりとでて、日本や米国のホラーとは違うことがわかります。ペドロもジミーも粗暴で、頭もあまりよくなく、いわゆる映画のヒーローからかけ離れた人物だからです。


 従って、2人が何とかしようともがけばもがくほど、自体が悪化していきます。まあ、悪魔憑きなんてとんでもない状況におちいったら、多くの人がパニックになるでしょう。ふと、新型コロナの感染初期のヒステリー状態になった社会を思い出しました。ウリエルが悪魔憑きなことを警察に知らせても、警察はそんなことは都会の出来事で田舎で起こるわけないとのんびりしています。また、ペドロが慌てて興奮して論理的にしゃべれないため、サブリナとは痴話げんかのようになってしまい、よけいに被害が拡大します。このあたりの平常性バイアスのひどさや、空想逃避してしまう人々もコロナ禍を思い出しました。監督はアルゼンチンの公害被害をモチーフにしているそうです。


 とにかく、犬やヤギといった動物から、幼女、お年寄り、障がい者まであらゆる動物、人間が悪魔憑きの犠牲となり、おかしくなってしまいます。いわゆるジャンプスケアはすくないものの、意味ありげにクローズアップすることで、くるぞくるぞきたー!というふうな展開が多いのも特徴。ルグナル監督のホラーへの造詣の深さとリスペクトが感じられます。そして後半に登場する処理人(エクソシスト)が
ミルタ(シルヴィナ・サバデル)という初老の女性という設定も格好いい。これまた日本やハリウッド映画ではまずヒロインとはなりえないキャラクターです。


 アルゼンチンの土俗的な風景、信仰をもとにしているのでしょうけど、これほど容赦がない展開は一周回ってワクワクします。悪魔憑きが蔓延している世界観への説明が一切ないのも潔くて好みでした。 
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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