作品情報 2023年マレーシア映画 監督:ジン・オング 出演:ウー・カンレン、ジャック・タン、セレーヌ・リム 上映時間115分 評価:★★★(五段階) 観賞場所:シネマ・ジャック&ベティ 2025年劇場鑑賞45本
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【ストーリー】
マレーシア、クアラルンプールのスラム街富都で暮らすアバン(ウー・カンレン)とアディ(ジャック・タン)の兄弟。アバンは聾啞というハンディがありながら市場の日雇いで真面目に暮らす一方、アディは裏社会と通じた危険な仕事も。
2人はIDがないため、ろくな仕事を受けられなかった。NPOの女性職員ジアエン(セレーン・リム)は、行方不明の父親が見つかれば不法移民でないと証明されるため、父親捜しに奔走していたのだが…
【感想】
前半は、スラムの悲惨な日常が淡々と描かれます。アバンは市場で真面目に働いていても障がい者だということでバカにされ、約束した給料を払ってもらえません。アディは不法外国人労働者のブローカーの手先をしていますが、警察の手入れを受けてぼこぼこにされてしまいます。しかし、同じ団地に住む性別不詳のマニー(タン・キムワン)とジアエンぐらいしか彼らの存在を気にかけません。
だからといって過剰に悲惨な毎日を演出するのを避けているのは好感を持てたのですが、中盤、2人にある事件が起きてからテイストががらりと変わります。2人は犯罪者といえども社会の犠牲者であるというトーンが強すぎて、被害者の視点が何もみえないことに、観ていて苛ついてきました。正直、貧困や差別で困難な生き方というのも分かりますけど、本人たちにも責任があるわけで、それでより悲惨になるのは自業自得なのになとかわいてみていました。
前半でも、特にアディは生きるために他人を踏みつける描写があり、これは淡々と映しているために気になりません。しかし、後半は本当に、さあ悲しいだろうという作り手の見方を強制させているようで、急にテンションが落ちてしまいました。彼らが犯罪とかかわっても、最後まで淡々とうつすのだったら、傑作になったろうに。
マレーシアの俳優はよく知らないのですが、主演の2人は本作で海外の映画祭でも活躍するようになりました。特に、終盤にアバンが手話で感情をぶつけるシーンは息をのむほど。南国なのにスラムの暗い写し方も含め、スラムの住人たちの息づかいが聞こえるようです。マレーシア映画は日本公開が少ないので、観ていて社会制度などの勉強になった側面もありました。
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