作品情報 2024年アメリカ映画 監督:ティム・フェールバウム 出演:ピーター・サースガード、ジョン・マガロ、レオニー・ベネシュ 上映時間95分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ川崎 2025年劇場鑑賞62本
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【ストーリー】
1972年のミュンヘン五輪ではアメリカのテレビ局が衛星によるライブ中継を初めて実施した。大会中の9月5日未明、選手村から500メートルほど離れたABCテレビの中継ルームに銃声が聞こえてきた。当直責任者のジェフリー(ジョン・マガロ)はただちに現地責任者のルーン(ピーター・サースガード)と連絡をとり、取材を始める。
テレビには映像が必要と、ルーンはカメラクルーと著名キャスターのピーター・ジェニングス(ベンジャミン・ウォーカー)を選手村に潜入させる。さらに、ドイツ人通訳のマリアンネ(レオニー・ベネシュ)が警察無線の傍聴に成功。アラブゲリラがイスラエル選手団を襲い、2人が殺され9人が人質になっていることを知る。テロリストは選手村の建物から手を振るなどテレビを意識していた。史上初めて、テロ事件の生中継が行われることになったのだ…
【感想】
スピルバーグの「ミュンヘン」でも取り上げられたミュンヘン五輪のテロ事件ですが、今では経緯について知る人も少なくなりました。映画は当時のABCテレビの中継画像をふんだんに使うことで臨場感がはんぱなく、警察の不手際や情報が錯そうしたことから、史実を知らなければ余計、当時の混乱ぶりを体感できます。
ジェフリーやルーンは取材だけでなく、衛星中継の枠をめぐって他局と交渉したり、スポーツ局ではなくて報道局に担当させようとする本社経営陣を説得させたり、取材を抑え込もうとする警察に抗議したりとさまざまな仕事がふってきます。また、何が正しい情報かドイツ政府ですらわからないなか、自分たちで情報をつかまなければなりません。
これが事件の史上初めてのテロのライブ中継で、世界で9億人が見ていた放送史に残る中計です。しかも、スタッフたちも気が付かなかったのですが、テロの犯人も中継をみていました。そのため、警官隊が突入しようとしている様子がだだ洩れになり、中継中に人質が殺害されたらどうするか内部で議論になります。それでも真実を伝えようとする彼らは、メディアとしての責任を自覚しており、まさに報道への熱い思いが伝わってきます。同時に、選手のふりをして現場に機材を運んだり、警察無線の傍受など、今ではコンプラでアウトな方法をとってまでも迫りたい真実への思い。さらに通信確保、テロップといった技術者たちまで含めた一体感もたまりません。
また、終戦から20数年しかたっておらず、ドイツの戦争責任などがいわれる時代でした。若い女性通訳のマリアンネを登場させ、スタッフから両親の戦争責任をそれとなく聞かれる場面や、イスラエル選手団が強制収容所の跡地でドイツチームと和解するシーンなど、その前にみた「ステラ」同様、戦争の傷跡を感じさせます。
テレビだけでなくネットでの中継が当たり前になった現代では、ルーンやジェフリーのような真剣さや混乱の中でも真実のために奮闘するプロは少なくなったのでは。むしろ、フェイクニュースに踊らされたり、自分の主義主張の前に真実をゆがめたりすることが起きているような、日本を含めた世界の現状をみると、なんともつらい気分になります。
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