作品情報 2023年アメリカ、ジョージア映画 監督:ガイ・ナティーヴ、ザール・アミール 出演:アリエンヌ・マンディ、ザール・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン 上映時間103分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ローソン・ユナイテッドシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞72本
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【ストーリー】
ジョージアで開かれた世界柔道選手権で、イラン代表のレイラ(アリエンヌ・マンディ)は監督のマルヤム(ザール・アミール・エブラヒミは)の指導の下、イラン女子初の金メダル目指して快進撃を続けていた。
ところが、決勝でイスラエル選手と対戦することを恐れたイラン政府は、2人に大会を棄権するよう命じる。最初は反発した2人だが、家族を人質にとられたマルヤムもレイラに棄権を指示。一方、レイラはテヘランに残る夫のナデル(アッシュ・ゴルデー)と励ましあいながら、大会への続行を決めるのだが…
【感想】
イランの天敵、イスラエルとはスポーツでも対戦できないという話は時折ききます。本作も2019年の東京での世界選手権の出来事をモデルにしています。ただ、現実には男子選手だったのですが、本作では中東諸国で抑圧されている女性を主人公に据えることで、余計に権力への絶望を感じさせられます。
中東情勢に疎い僕からすると、なぜ対戦できないのか。対戦してコテンパンにやっつければいいのにとも思うのですけど。また、レイラは柔道選手にもかかわらず、試合中にヘジャブを着用しています。これも「聖なるイチジクの種」同様、女性抑圧の象徴。ヘジャブの着用についても批判的に描いており、本作はイランで上映禁止となり、アリエンヌ、ザーラら主要キャストは亡命イラン人で固めているというのもよくわかります。
また、全編、モノクロで撮影されていることも緊迫感を高めます。大会の運営担当のステイシー(ジェイミー・レイ・ニューマン)ら、世界柔道連盟は2人に救いを出そうとしていますが、イランで家族が人質になってしまい有効な手を打つのも大変です。故国とは何か、家族とはなにか深く感じさせられます。柔道の試合シーンは気合が入っていますが、「一本!」「払い腰!」などの日本語が大会シーンで入るのは、それまでの緊張をときほぐしてくれる効果もあったかも。
「聖地には蜘蛛が巣を張る」でカンヌの主演女優賞を得たザーラは共同監督も勤めています。おり、ナティーヴはイスラエルの監督で、イスラエルとイランの監督が共同制作するのは初めてとか。アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ノー・アザー・ランド」もイスラエルとパレスチナの監督の共同制作であり、映画界では政治の動きに対抗している流れも出ているのは感心しました。
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