作品情報 2025年日本映画 監督:塚本連平 出演:笑福亭鶴瓶、原田知世、重岡大毅 上映時間120分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ローソンユナイテッドシネマみなとみらい 2025年劇場鑑賞80本
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【ストーリー】
1999年、奈良市のすし職人、西畑保(笑福亭鶴瓶)は長年連れ添った妻の皎子(原田知世)にラブレターを書きたいと悩んでいた。山間部で育ち親に虐待された保は小学校にも通えず、ひらがなを読むのがやっとで漢字は書けなかったのだ。
1967年、親方(笹野高史)の設定した見合いで、若き保(重岡大毅)は皎子(きょうこ、上白石萌音)と恋に落ちた。自分がろくに読み書きできないことを悩み、隠していた保に皎子は自分が保の手になるという。そして、その後も仕事が忙しくて勉強する暇のなかった保の代わりに読み書きをしていた。だが、60歳になって寿司屋を定年退職した保は、迷った末に夜間中学の教員、谷山(安田顕)の後押しもあり、一から勉強を始めることにする。
【感想】
夜間中学に入るのが1999年というのがいい。保は戦時中や戦後の混乱で勉強する機会を逸してしまい、皎子も空襲で親を失ったという、まだ、日本が大変だった時期に子供時代を過ごした人たちが主人公なのです。物語では大きな声では取り上げないけれど、貧しかった日本の大変さと、それでも必死に努力してきた保たちの苦労が良くわかります。
現代パートと過去パートが交互に映し出されますが、良くも悪くもパブリックイメージ通りの鶴瓶がみられる安定感の現代に対して、過去パートは重岡、上白石の熱演もあり、本当に高度成長期の庶民という三丁目の夕日の世界をナチュラルにみられる感じで気持ちがいい。仲良く、時には些細なことで喧嘩して、でも子供が生まれて家族になってと、まるで本当に当時を生きていたような演出はさすが塚本監督の職人らしさが出ています。
現代パートも長女役を徳永えりが演じていることもあり、これまた、西畑家がそれほど裕福でなくても温かい家庭だということがわかります。さらに、安田が癖のある演技を封印して、温厚篤実な中年教師になりきり、保の暖かい人柄で不登校になった若者や、異国で苦労している外国人たちとも仲良くなる描写は、定番とはいえ、日本人の良さ、長所というものを伝えてくれます。奈良が舞台なだけに鹿が背景に映っているシーンがちょくちょくあり、「ときどき、私は考える」、アニメの「しかのこのこのここしたんたん」など、鹿が出てくる作品は良い作品という僕の経験を上書きしました。
さらに現代パートはコロナ禍までちょっとづつ続くのは意外でした。実話をもとにしているみたいですが、本当に昭和に生まれ、平成、令和と続いてきた老夫婦の生きざまがみられます。原田知世が全然老けメイクにならないのはちょっと突っ込みたくなりましたが、鶴瓶との息もぴったり。邦画の人情ドラマとして手堅くまとまっていました。出演者からして客席は中高年ばかりでしたけど、若い世代にも見てもらいたいという気もふとしました。
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