作品情報 2023年アメリカ、メキシコ映画 監督:ミシェル・フランコ 出演:ジェシカ・チャステイン、ピーター・サースガード、ブルック・ティンバー 上映時間103分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:シネスイッチ銀座 2025年劇場鑑賞94本
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【ストーリー】
ニューヨーク・ブルックリンで暮らすシングルマザーのシルヴィア(ジェシカ・チャステイン)は、13歳の娘アナ(ブルック・ティンバー)と貧しいながらも幸せな家庭を築いていた。だが、ある事情でシルヴィアは母のサマンサ(ジェシカ・ハーパー)と絶縁。さらに、昔の友人たちとも縁を切っていたが、唯一付き合いのある妹のオリヴィア(メリット・ウェヴァー)の勧めで、高校の同窓会に渋々出席する。
そこでもぼっちだったシルヴィアは早々に切り上げて帰宅するが、参加者の一人、ソール(ピーター・サースガード)が後をつけてきたうえ、自宅アパートの前で寝てしまい、夜の雨で濡れてしまった。シルヴィアは呆れつつも放っておくわけにいかず、ソールが持っていた緊急連絡先のタグに書かれていた兄のアイザック(ジョシュ・チャールズ)に連絡を取る。なんと、ソールは若年性認知症の症状が出ているというのだ。シルヴィアは高校時代、ソールからひどい目にあった記憶があるのに、彼はそのことをまったく覚えておらず…
【感想】
シルヴィアは過去につらい出来事があってアルコール依存症になり、娘が生まれたのをきっかけに禁酒の自助会に通っています。仕事も介護ヘルパーで決して裕福なわけではありません。一方、ソールはかつては裕福ぽかったですが、若年性認知症の症状で、アイザックに頼りきり。自分で外出すると帰りがわからなくなってしまいます。こうした社会的な弱者2人が出会うわけですけど、最初はシルヴィアからすれば怖くて嫌だったでしょうね。
よく、加害者は忘れても被害者は忘れないといいますが、それが認知症が原因だったらどうなるんだろうと観ていて思いました。まあ、話はそこからすぐにそれていきます。2人の不器用な愛が次第に育まれて行く様子がなんとも微笑ましい。Hなシーンはあるけれど、むしろバスタブで傷ついた2人が抱き合うだけでもなんともエモい。そして、アナが暖かく見守るのもまた素敵な感じ。
一方、シルヴィアとアナ、シルヴィアとサマンサの2組の親子関係を通して、家族の難しさを描きます。アナに対しては時には厳しく、愛情をもって接していてなんともうらやましい限りの親子関係が成立する一方、サマンサに対してはアナの顔を見せないほどの断絶ぶり。観客はシルヴィア目線の話になるけれど、親子といえども常につながっているのではなくて、きちんと相手のことを思いやる必要があると思わされました。ソールについても、アイザックは愛情と行き過ぎた保護とは違うのにいい年をした大人なのに分かりません。結局人間関係はいくつになってもうまくいかないものと思ってしまいます。
タイトルにあるあの歌とはプロコル・ハルムの「青い影」(1967年)。ただ、難解と言われる歌詞ですけど、本作とはあまり関係なさそう。むしろG線上のアリアに似ているイントロが、傷ついた2人をやさしく包んでいるようでいいですね。ジェシカ・チャステインもピーター・サースガードも強くて凶暴な役柄が多いイメージですけど、この2人をこういう配役で起用したことにも拍手です。
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