2025年03月23日

ケナは韓国が嫌いで

 ヘルコリアといわれるほど、若い世代が生きづらい韓国の現状を描いた作品ですが、おじさんの僕からすると経済成長で豊かになった時代だからこそ起きる悩みなのかなと思ってしまいました。「グエムル」のコ・アソンがすっかり大人の女性になっているのは驚き。

 作品情報 2024年韓国映画 監督:チャン・ゴンジェ 出演:コ・アソン、チュ・ジョンヒョク、キム・ウギョム 上映時間107分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ヒューマントラストシネマ有楽町 2025年劇場鑑賞96本



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 【ストーリー】
 28歳の女性、ケナ(コ・アソン)は毎日嫌なことばかり。早く結婚して子供を産むようにという母、片道2時間かけて通勤する会社では上司から不正に目をつぶれていわれる。学生時代からの恋人ジミョン(キム・ウギョム)は就職浪人中なのにどこか上から目線。


 ケナは自分が韓国に合わないと感じ、何もかも捨ててニュージーランドで新生活を求めることを決める。そこで、多くの体験をするのだが…


 【感想】
 韓国の若い女性の苦悩をつづった「82年生まれ、キムジヨン」とおなじ出版社から出た小説が原作。ただ、原作も映画もみた「キムジヨン」の苦悩は、家父長制や男尊女卑に苦しめられ、日本人のおっさんからみる僕から見ても大変だなと共感したけど、ケナの場合、同じようなことは日本でも起きてるのに、何もかも捨ててしまう行動力は真似できないと、どこか遠い世界みたいに感じました。


 母親にしてもジミョンにしてもケナの幸せを祈り、韓国社会ではある種当然の常識的なことを言っています。しかし、若い世代のケナは我慢するのが嫌だった。このへんは世代間の差というのが如実に現れています。また、男女の差も大きい。若い女性からすればなんで自分たちが辛い目に合うのか非合理だと憤るのはわかります。日本も似たようなところがあって、「韓国人って働くために生きてるみたい」というセリフは、周囲の日本人に突き刺さりまくりです。


 もう一つ、ケナの家は貧しく(といっても僕からすると中流にみえたけど)、ジミョンの家は豊か。「パラサイト」でもあったけど、貧富の差の恐ろしいことは、豊かなほうが差別意識をもっていなくても、無意識だったり、あるいは貧しい方のひがみだったり、結局差別につながってしまうこと。ジミョンの母が金持ちマウントをとってくるのは醜かったけど、ジミョン本人は決して悪い人でなく、ケナが本心を分かるようにぶつければ改善されたろうにと思います。でも、そこまでやる義理もないわけですし、難しい問題ですね。就職格差も大きく、ケナは通勤2時間ですけど、公務員試験に落ち続けている同級生ギョンユン(パク・スンヒョン)が恥ずかしがって友人と連絡をとらないなんて様子は日本以上に韓国の厳しい競争社会を感じます。


 ニュージーランドでも、言葉や制度の壁、収入面、地震などさまざまな問題が起きますし、ニュージーランドと韓国の出来事が入れ子のようになっているため、ちょっと分かりにくい部分もあります。それでも、単純に青い鳥は地元にあったなんて陳腐な結末に終わらずによかった。不機嫌顔を見せているシーンが多いコ・アソンが格好良いなとつくづく感じました。
posted by 映画好きパパ at 18:00 | Comment(0) | 2025年に観た映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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