作品情報 2024年ラトビア、フランス、ベルギー映画アニメ 監督:ギンツ・ジルバロディス 上映時間85分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:ブルク13 2025年劇場鑑賞97本
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【ストーリー】
森の奥深くに住む1匹の黒猫。ある日、野良犬の群れが捕まえた魚をめぐって争っている現場に出くわし、それを横取りしたところ追いかけられた。ところが、逃げている最中に、前方から鹿など大勢の動物が慌てて逃げてくる。なんと大洪水が襲ったのだ。
黒猫が住処にしていた、人間が昔造って放棄した小屋も水に埋もれる。たまたま、大きなボートが流されてきてそれに飛び乗ったところ、アルパカがいた。さらに野良犬の中の1匹や取り残されていたメガネザルもボートに乗り込んでくる。洪水に流されるまま動物たちの冒険が始まる。
【感想】
動物たちを擬人化せず、犬も猫もリアルなまま。毛を逆立てて怒ったり、犬はうろうろしながら吠えたてたり。もちろん人間の言葉を動物がしゃべることはありません。しかし、豊かな表情でなんとなく考えていることがわかるから不思議。
劇中には人間は出てきませんが、人間が放棄した建物や彫像はでてきます。なぜか黒猫の住処のあたりは、猫の像がたくさんありました。さらに洪水が起こる理由も特に説明がありません。そして、割とリアルと思っていたら巨大なクジラがいきなり出てきたりして、とにかく動物や大自然に身を任せて、まったり観るのが最適だと思わされました。
動物たちが船にのって洪水を旅するのはノアの箱舟を思い出しますが、ノアのような人間はいません。またハトの代わりに巨大な鳥が登場します。それでも、種類が違う動物たちは時には喧嘩しつつ、互いに仲間意識がでてきます。「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」の動物が、実は人間のメタファーだったように戦争、紛争が各地で起きている現代に対する寓話なのか。それとも、共同脚本、撮影、編集、共同音楽を一人でこなしている監督個人の頭の中の再現なのか。
黒猫が主人公なので序盤に退場することはないだろうと思いつつ、洪水を必死に逃げまどう姿に思わず「生き残って」と声をかけたくなりました。それは犬や巨大鳥など他の動物も一緒。セリフ一つないのに生命の大切さを痛感します。動物たちと一緒に洪水を生き残る冒険を観客も楽しんでいる感じでした。
目玉の大きな黒猫がかわいいのですけど、寂しがり屋でボートの中で猫と仲良くなりたい犬のおバカかげんもとてもかわいい。動物の仕草を監督はよく観て描いているなと感心します。さらに、漂流中の船から眺める山や人間の遺跡などは想像力豊かで、なにより洪水の恐ろしさを体感できました。セリフがないため、子供から大人まで楽しめる逸品といえましょう。アカデミー賞の長編アニメ部門を争った、同じ動物たちの世界を描いたアニメ「野生の島のロズ」も良作でしたが、本作の方が作為がなく、非常に自然に楽しめます。
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