作品情報 2023年アメリカ映画 監督:ロー・チェン 出演:ジェリー・シュー、キャシー・シュー、ジェシー・シュー 上映時間75分 評価:★★★★(五段階) 観賞場所:TOHOシネマズ日比谷 2025年劇場鑑賞106本
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【ストーリー】
台湾からアメリカに移住したジェリー・シュー(本人)は40年間まじめに働く一方、倹約とコツコツ投資に努め、100万ドル近い資産を作って引退した。リタイア後はフロリダに住んでいるが、妻のキャシー(本人)とは離婚し、ジェシー、ジョン、ジョシュア(それぞれ本人)の3人の子どもも独立し、わびしい一人暮らしだった。
ある日、携帯電話に電話会社から、ジェリーの銀行口座が国際犯罪に利用されているため、電話を止めると連絡が入る。指示通り、上海市公安局(警察)に電話したジェリーは、欧警部(ファン・ドゥ)から、ジェリーも共犯とみなされており捜査に協力しなければ逮捕するといわれる。すっかり信じたジェリーは、指示されるまま自分の資産を送金していき…
【感想】
冒頭、「すべてが実話である」とのテロップがでます。日本でも電話会社や警察を名乗る特殊詐欺が社会問題になっていますが、アメリカでも同じような手口があったとは。しかも、中国の警察から連絡があるため、電話以外に確認できないのがミソ。ジェリーは台湾出身ですが、中国にも行ったことがあり、中国の公安が恐ろしかったのでしょう。
そのうえ捜査に協力させるということで、わざわざ銀行の写真をとらせたり、行員との会話を隠したスマホで警察に聞かせるといったことまでやります。飴と鞭の使い方がうまく、ジェリーは自分が捜査に協力しているため、上海市から表彰されるのではと夢想するほどでした。
傍から見ていればなんでこんな詐欺にひっかかるのかとあきれますが、高齢になり認知機能が衰えてきたこともあり、とっさの判断力がつきません。さらに、一度、警察を信じて小分けで送金したためそれを疑うとこれまでの送金が無駄になるというアンカリング効果もあったのかな。
また、家族が別居していて、たまに食事をとることがあってもジェリーのおかしな様子を見抜けるほど親しいわけでなかったというのも納得できます。日本でも高齢者を狙った犯罪、悪徳商法がありますけど、親が心配だったら日ごろからきちんと家計のことを話し合ったほうがいいでしょう。台湾出身ということもあるでしょうが、ジェリーは家長であるとの意識があって、子どもたちに心配させまいと黙っていました。日本の高齢者も似たような反応をするでしょうから、本当に要注意です。若いころから倹約していたジェリーと、浪費家の妻は性格があわないけど、詐欺被害にあったときに、「こんなことなら人生をもっと楽しんでおけばよかった」とジェリーが後悔するシーンは秀逸。おカネは大切だけどもった大切なものは人生にあることをおしえてくれます。
警察を名乗る犯罪組織の再現もうまい。ジェリーが007の気持ちになったというほど、捜査用語を駆使してだましてしまいます。ラストは実話だからなんともいえない結果に終わりますが、この映画の撮影のために家族がまた全員集まったことはうれしかったそう。それにわざわざ日本でも上映されるなど国際的な評価を得ているわけで、共同脚本と主演男優となったジェリーのギャラが騙されたカネの補填に少しでも役立てばいいな。ちなみにジェリーは若いころから芝居好きで、地域の教会のクリスマス劇も手掛けていたそう。芸は身を助くとはこの通りですね。同時に詐欺師の巧妙な手口に騙されないよう、観ているこちらも背筋がしゃんとする思いになりました。
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